不動産投資で賃料収入を得ると、原則として確定申告が必要になります。しかし「どの収入が対象か」「何が経費として認められるか」「青色申告と白色申告の違いは何か」など、初めての方には分かりにくい点が多いものです。本記事では、不動産投資に関わる確定申告の基礎から2026年版の最新情報まで、実務的に使える内容で解説します。
なお、税務の判断は個人の状況により異なります。具体的な申告内容については税理士など専門家にご相談ください。
不動産投資と確定申告の基本
確定申告が必要なケース
個人が不動産を貸し付けて得た収入は「不動産所得」として確定申告の対象となります。確定申告が必要なのは以下のケースです。
申告の時期
毎年2月16日〜3月15日が確定申告期間です(2026年分の申告は2027年2〜3月)。e-Taxを利用したオンライン申告や、税務署での書面申告が可能です。
不動産所得の計算方法
基本的な計算式
```
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
```
収入金額と必要経費の内容を正確に把握することが、確定申告の第一歩です。
収入金額に含まれるもの
以下が不動産所得の収入として計上されます。
注意点:敷金・保証金は原則として返還義務があるため、受け取り時点では収入になりません。ただし、入居者が退去しその一部を原状回復費用に充当した場合は、充当部分が収入となります。
必要経費として計上できる費用
不動産所得から差し引ける必要経費は、正確に把握することで課税所得を適切に下げることができます。
経費として計上できる主な項目
修繕費
物件の維持・管理のために支出した修繕費は経費になります。エアコンの修理、外壁塗装、設備の交換費用などが該当します。ただし、資産価値を高める「資本的支出」(増築・グレードアップ等)は経費ではなく減価償却の対象となります。
損害保険料
火災保険・地震保険・施設賠償責任保険などの保険料が経費に計上できます。複数年一括払いの場合は、その年に対応する分だけ経費計上(按分)します。
固定資産税・都市計画税
物件に係る固定資産税・都市計画税は経費として計上可能です。土地・建物の両方が対象です。
管理委託費
不動産管理会社に支払う管理委託手数料(家賃の5〜10%程度)は経費として認められます。
借入金利息
物件購入のための借入金(住宅ローン・アパートローン等)の利息部分は必要経費になります。ただし、元本返済は経費にはなりません。
その他の経費項目
減価償却費の計算
減価償却とは
建物は時間の経過とともに価値が減少します。この「価値の減少分」を毎年の必要経費として計上する仕組みが「減価償却」です。土地は価値が減少しないため、減価償却の対象は建物部分のみです。
耐用年数と償却率
建物の耐用年数(税法上)は構造により異なります。
| 構造 | 法定耐用年数 | 定額法償却率 |
|-----|-----------|----------|
| 木造 | 22年 | 0.046 |
| 軽量鉄骨造(2mm以下) | 19年 | 0.053 |
| 軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) | 27年 | 0.038 |
| 重量鉄骨造(4mm超) | 34年 | 0.030 |
| RC造(マンション) | 47年 | 0.022 |
計算方法(定額法)
不動産所得の計算では原則として「定額法」が適用されます。
```
年間減価償却費 = 建物取得価額 × 定額法償却率
```
例:取得価額5,000万円の鉄骨造アパート(重量鉄骨、耐用年数34年)の場合
```
5,000万円 × 0.030 = 150万円/年
```
毎年150万円を経費として計上できます。
中古物件の耐用年数
中古物件を取得した場合、以下の簡便法で残存耐用年数を計算します。
法定耐用年数を超えた物件の場合:
```
残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2(端数切り捨て)
```
法定耐用年数の一部が経過した物件の場合:
```
残存耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 0.2
```
木造(法定22年)の築25年の物件の場合、22×0.2=4年が残存耐用年数となります。耐用年数が短いほど、短期間で多く減価償却費を計上できます。
青色申告のメリット
白色申告との違い
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。より多くの特典を受けられる青色申告への切り替えが不動産投資家には一般的に推奨されます。
青色申告の主なメリット
青色申告特別控除
青色申告の最大の特典が「青色申告特別控除」です。2026年(令和7年分)の申告では、複式簿記で記帳しe-Taxで申告する場合に65万円控除が適用されます。
令和8年度税制改正の動き(2027年分以降)
令和8年度税制改正大綱(2025年12月公表)では、青色申告特別控除の上限を65万円から75万円へ引き上げる方向が示されています。75万円控除の要件は、複式簿記での記帳に加えて「電子帳簿保存法に基づく電磁的記録の保存」(優良電子帳簿の保存)を満たす必要があります。この改正は2027年分の所得税から適用される予定です。
2026年の申告(令和7年分)は現行制度(65万円控除)が適用されますが、2027年以降の75万円控除に備えて、電子帳簿の体制を整えておくことが賢明です。
純損失の繰越控除(3年間)
不動産所得が赤字となった場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって黒字と相殺できます。初期に赤字が出た場合でも将来の税負担を軽減できます。
少額減価償却資産の特例
青色申告者は、取得価額が30万円未満の少額資産をその年に全額経費として計上できます(年間合計300万円限度)。
青色申告の始め方
青色申告を行うには、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。申請の期限は原則として、青色申告をしたい年の3月15日まで(新規に不動産投資を始めた場合は、開始後2ヶ月以内)です。
損益通算による節税効果
不動産所得の赤字と給与所得の相殺
不動産所得が赤字(経費が収入を上回る)の場合、その赤字を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できます。これにより課税所得が減り、所得税・住民税の負担が軽減されます。
減価償却費は実際の現金支出を伴わない経費であるため、「帳簿上は赤字だが実際のキャッシュは黒字」という状態を作りやすく、これが不動産投資の節税効果として語られることが多い仕組みです。
注意点:土地取得のための借入金利息
不動産所得の赤字のうち、土地取得に充てた借入金の利息部分は損益通算の対象外となります。建物部分の借入金利息は対象となるため、物件取得時の借入割合(土地・建物)を把握しておくことが重要です。
必要書類の準備
確定申告に必要な書類を事前に準備しておきましょう。
収入関係
経費関係
物件関係
申告書作成の流れ
まとめ
不動産投資の確定申告で押さえるべきポイントをまとめます。
税務の詳細は年度ごとに変わることがあります。具体的な申告内容については、税理士等の専門家への相談をお勧めします。
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