アスベスト(石綿)と賃貸建物の関係
仙台市内には昭和期に建てられたアパートや戸建て賃貸、テナントビルが数多く残っています。こうした築古の建物を解体したり大規模な改修工事を行ったりする際に、建材に含まれる石綿(アスベスト)への対応が法律で義務づけられています。
石綿は断熱性・耐火性に優れるため、昭和30年代から平成初期にかけて吹き付け材・屋根材・壁材・配管の保温材などに幅広く使われてきました。しかし吸入すると数十年後に中皮腫や肺がんを発症するリスクがあることが判明し、現在は製造・使用が全面禁止されています。
問題は「すでに建っている建物には石綿含有建材が残っている可能性がある」という点です。解体や改修の際に石綿を含む建材を誤って粉砕・切断すると、粉じんが飛散して作業員や近隣住民の健康被害につながります。そのため国は、解体・改修工事の着手前に石綿の有無を調べる「事前調査」を義務化し、段階的に規制を強化してきました。
法改正で変わった「事前調査義務化」の要点
大気汚染防止法と石綿障害予防規則(石綿則)の改正により、事前調査の制度は次のように整備されました。
- 報告義務の開始: 一定規模以上の解体・改修工事について、事前調査の結果を環境省の電子届出システム(石綿事前調査結果報告システム)を通じて都道府県等へ報告することが義務化されました。仙台市は政令指定都市であるため、報告先は仙台市になります。
- 有資格者による調査の義務化: 事前調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が実施しなければなりません。無資格者による目視のみの判断で「石綿なし」とすることはできなくなっています。
- 対象工事の範囲: 床面積の合計が一定規模以上の解体工事、または請負代金が一定額以上の改修工事が対象です。個人所有のアパートや戸建てでも規模要件を満たせば適用されます。
この改正の背景には、事前調査が不十分なまま解体が行われて近隣に石綿粉じんが飛散した事例が各地で報告されてきたことがあります。仙台市内でも老朽化した賃貸物件の建て替えやリノベーションが増えることが見込まれており、「知らなかった」では済まされない制度になっています。
仙台市内で解体・改修する際の実務的な流れ
オーナーが工事を発注する際、実務上は概ね次の手順で進みます。
- 工事発注前に元請業者へ確認: 施工業者が有資格者による事前調査を実施することを、見積もり・契約の段階で確認します。事前調査費用が見積もりに含まれているかどうかも必ず確かめてください。
- 書面調査と現地調査の実施: 建物の図面・設計図書の確認と現地目視調査を組み合わせ、石綿含有建材の有無を書面・写真で記録します。
- サンプル分析(必要な場合): 書面・目視調査だけでは判断できない場合は、建材のサンプルを採取して分析機関で成分分析を行います。
- 行政への報告: 対象規模の工事であれば、調査結果を電子届出システムで仙台市へ報告します。
- 石綿含有建材が見つかった場合の対応: 除去・封じ込め・囲い込みのいずれかの工法で適切に処理してから、解体・改修工事を進めます。
オーナー自身が調査を実施するわけではありませんが、発注者としての管理責任は残ります。「事前調査を省いて安くした」見積もりを選ぶと、後から発覚したときの手戻りや追加費用の方がはるかに高くつくことがあります。
費用・工期への影響と見積もり時の確認事項
事前調査の費用は建物の規模・構造によって異なります。書面調査と現地目視調査だけで完結する場合と、建材サンプルの分析が必要な場合とで費用感が変わり、石綿含有建材が実際に検出されれば除去工事の専門業者への発注が別途必要となります。通常の解体・改修費用に上乗せされるため、総額での資金計画が欠かせません。
見積もりを取るときは、次の点を施工業者に明示的に確認しておくと安心です。
- 有資格者による事前調査が見積もりに含まれているか
- サンプル分析が必要と判断された場合の追加費用の目安はあるか
- 石綿含有建材が見つかった場合の除去費用はどの段階で見積もりに反映されるか
- 行政への電子報告を施工業者側が代行するかどうか
工期の面でも、事前調査と分析結果が出るまでの期間、さらに石綿除去が必要な場合はその作業期間が加わります。賃貸物件の入居者退去スケジュールや次の入居募集の計画を立てるときは、この調査・除去期間を事前に見込んでおくことで、空室期間の見通しと資金計画が立てやすくなります。
法令違反・ペナルティのリスク
事前調査を実施せずに解体・改修を行ったり、虚偽の報告をしたりした場合、法令に基づく改善命令や罰則の対象となりえます。発注者であるオーナーが直接罰則を受けるケースは限定的ですが、施工業者が調査を怠ったことが後から判明した場合は、近隣住民とのトラブル・工事の中断・やり直し費用の発生という形でオーナーにも影響が及びます。
また、近隣への石綿飛散は健康被害の問題として社会的な批判を受けることがあり、物件や賃貸業としての信頼に関わります。「安い業者に任せたら事前調査が省略されていた」という事態を未然に防ぐためにも、施工業者の選定と契約書・見積書の内容確認が重要です。
賃貸オーナーとして準備しておくこと
築古物件の建て替えやリノベーションを検討し始めた段階で、次のことを早めに整理しておくとスムーズです。
- 建物の建築年と使用建材の把握: 設計図書や確認済証などの書類を確認し、どの部位にどのような建材が使われているかを把握しておきます。図面が残っていない場合は、施工業者との現地調査で確認することになります。
- 複数業者への相談と見積もり依頼: 事前調査を含めた総費用・工期を複数の業者から取り寄せることで、適正な費用感と信頼できる業者を見極めやすくなります。
- 仙台市の窓口への確認: 対象規模の判断や報告手続きの詳細については、仙台市の大気環境に関する窓口に問い合わせることで最新の基準を確認できます。
石綿の事前調査義務化は、仙台のように築古の賃貸建物が多く残る地域のオーナーにとって、解体・改修計画を立てるうえで避けて通れない制度です。着工前の有資格者調査・行政への報告・石綿含有時の除去という一連の流れを理解し、見積もりの段階から施工業者と丁寧に確認しておくことが、工期の遅れや予期せぬ追加費用を防ぐことにつながります。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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