親や祖父母から不動産を相続したものの、「自分では住まない」「維持・管理が難しい」という理由で売却を検討されている方は少なくありません。しかし、相続した不動産の売却は通常の売却よりも手続きが複雑で、税金に関する理解も必要です。
本記事では、相続不動産を売却する際の一連の手続きフローと、かかる税金(特に譲渡所得税)について、2026年時点の情報をもとに解説します。
相続不動産売却の全体フロー
相続した不動産を売却するまでの手順は大きく以下の通りです。
特に2024年4月から相続登記が義務化されたため、まず名義変更を済ませることが必要です。各ステップを順番に解説していきます。
ステップ1: 相続の発生と相続不動産の確認
相続する不動産の把握
相続発生後まず確認するのが、被相続人(亡くなった方)が所有していた不動産の全容です。
- 固定資産税の納税通知書: 毎年4〜6月に送付される通知書に所有不動産が記載されている
- 登記事項証明書(登記簿謄本): 法務局で取得できる。所有者・担保・抵当権の状況を確認できる
- 名寄帳: 固定資産税を管理する市区町村の課税台帳。同一人物が所有する不動産を一覧で確認できる
仙台市内の不動産であれば、仙台市の固定資産課税台帳を確認することで把握できます。
遺産分割協議
複数の相続人がいる場合、誰がその不動産を相続するかを話し合いで決める「遺産分割協議」が必要です。全員が合意した内容を「遺産分割協議書」として書面化します。
売却を前提とした遺産分割の方法
- 不動産を1人が相続して売却し、売却代金を分配する
- 不動産を複数人で「共有」相続した上で売却する(ただし共有者全員の同意が必要)
ステップ2: 相続登記(名義変更)
2024年4月から相続登記が義務化
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した場合、相続を知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務化されました(不動産登記法改正)。
正当な理由なく期限内に登記を怠った場合、10万円以下の過料(罰則)が課せられる可能性があります。
遡及適用: 2024年4月1日より前に相続が発生した場合でも、施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に相続登記を行う必要があります。
相続登記の手続き
相続登記は法務局(仙台法務局またはその支局)に申請します。
相続登記に必要な主な書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(戸籍一式)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印が必要)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
相続登記は司法書士に依頼するのが一般的です。費用は不動産の評価額・手続きの複雑さによりますが、司法書士報酬と登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)が主なコストです。
ステップ3: 不動産の査定・売却活動
相続登記が完了したら、不動産会社に査定を依頼して売却活動に入ります。
査定の種類
簡易査定(机上査定)
物件情報をもとに不動産会社が概算価格を算出する方法。すぐに金額が出るが、精度は低い。
訪問査定
担当者が実際に物件を確認して算出する方法。より実態に即した価格が出る。
複数の不動産会社に査定を依頼し(いわゆる「相見積もり」)、価格や条件を比較することを推奨します。
仙台市内の相続物件の売却における注意点
- 空き家のまま放置していた期間が長い物件は老朽化が進んでいる場合がある
- リフォームや更地渡しが必要な場合もある(費用対効果を事前に確認)
- 農地・山林など特殊な不動産は手続きが複雑になることがある
ステップ4: 売買契約・引き渡し
売却価格・条件が合意できたら売買契約を締結し、引き渡し・決済を行います。
相続した不動産で、被相続人の荷物・家財が残っている場合は、事前に処分・整理が必要です。特に遠方の相続人が多い場合は引き渡し準備に時間がかかるため、早めにスケジュールを組むことをおすすめします。
ステップ5: 確定申告(譲渡所得税)
不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合、翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)で譲渡所得税を申告・納付する必要があります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 売却価格: 不動産の売却代金
- 取得費: 相続で取得した不動産の場合、被相続人が購入した際の価格(購入代金+購入時諸費用)
- 譲渡費用: 売却のために支払った仲介手数料・測量費・解体費など
取得費が不明な場合
被相続人が不動産を購入した際の資料が残っていない場合、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うことができます。ただしこの場合、課税対象の譲渡所得が大きくなることが多いため、できる限り実際の取得費を証明する資料(古い売買契約書・領収書など)を探すことを推奨します。
税率(所有期間による違い)
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。相続の場合は、被相続人が取得した日から起算します。
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 5年以下(短期) | 30% | 9% | 39% |
| 5年超(長期) | 15% | 5% | 20% |
※復興特別所得税(所得税額の2.1%)が別途かかります
相続した不動産の場合、被相続人が長期間所有していれば、長期譲渡所得(20%)の税率が適用されることが多いです。
3,000万円特別控除(空き家の特例)
相続した被相続人の居住用財産(空き家)を売却する際、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法第35条の3)。
適用期間: 令和9年(2027年)12月31日まで
主な適用要件
- 相続または遺贈により取得した、被相続人が居住していた家屋・土地であること
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋(または解体して更地として売却すること)
- 相続開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
2024年1月1日以降の改正点
- 売却後に耐震改修工事・取り壊しを行った場合も対象に追加
- 相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に制限(改正前は常に3,000万円)
この特例を活用すると、多くのケースで譲渡所得税をゼロに抑えることができます。
相続税の取得費加算の特例
相続した不動産を一定期間内(相続開始から3年10ヶ月以内)に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例(租税特別措置法第39条)も利用できます。
この特例を使うことで取得費が増加し、課税対象の譲渡所得を圧縮できます。
確定申告に必要な主な書類
- 売買契約書(売却時)のコピー
- 取得費を証明する書類(古い売買契約書・領収書等)
- 仲介手数料などの領収書
- 登記事項証明書
- 相続した旨を証明する書類(戸籍謄本・遺産分割協議書等)
- 3,000万円特別控除を使う場合: 市区町村の確認書等
確定申告は税理士に依頼することをおすすめします。特に特例・控除を活用する場合は、適用要件の確認や書類の準備に専門知識が必要なため、税理士にご相談ください。
相続不動産売却のよくある落とし穴
相続登記を放置していて売れない
相続登記が済んでいない不動産は名義が被相続人のままのため、そのままでは売却できません。まず相続登記を完了させることが先決です。2024年の義務化後は罰則もあるため、早期に手続きを進めることが重要です。
相続人間で意見が分かれる
複数の相続人がいる場合、売却に全員が同意しないと進められません。特に共有名義となっている場合は、1人でも反対すると売却できません。遺産分割協議で事前に合意形成をしておくことが重要です。
取得費が不明で税負担が大きくなる
古い不動産ほど取得費の証明書類が残っていないケースが多く、概算取得費(売却価格の5%)を使わざるを得ないと課税対象が大きくなります。被相続人の古い書類を探したり、地価公示などのデータを活用することで、実際の取得費に近い金額を証明できる場合があります。
特例の期限を見逃す
3,000万円特別控除は「相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日まで」という期限があります。相続後に長期間放置していると、この期限を過ぎてしまう可能性があります。
まとめ
相続した不動産を売却する際の手続きと税金の流れをまとめます。
- 相続登記を完了させる: 2024年4月から義務化(3年以内)
- 不動産会社に査定を依頼する: 複数社の比較がポイント
- 売却活動・契約・引き渡し: 家財整理なども早めに準備
- 確定申告を忘れずに: 譲渡所得が生じた場合は申告・納税が必要
- 税金の特例を最大限活用する: 3,000万円特別控除・相続税の取得費加算の特例
相続不動産の売却は、通常の売却よりも税務・法務の知識が求められます。税理士・司法書士・不動産会社が連携して対応することで、スムーズに手続きを進めることができます。よくある疑問点はよくある質問もあわせてご参照ください。
エムアセッツでは売却のお問い合わせを受け付けており、地元の信頼できる仲介会社である株式会社松栄不動産をご紹介しています。相続した不動産の取り扱いにお困りの方は、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
関連コラム
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
相続した不動産についてお困りですか?
空き家・収益物件の相続、売却・活用方法についてお問い合わせを受け付けています。
