「相続放棄」とはどんな制度か
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産も借金も一切引き継がない意思表示を、家庭裁判所に申述する手続きです。相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったとみなされます。
不動産を相続した場合、「プラスの財産」だと思って単純承認したものの、後から多額の負債や管理費用が判明するケースも少なくありません。また、仙台郊外や過疎地の山林・農地など、売却も賃貸もできない「負動産」を引き継いでしまうと、固定資産税と管理コストが延々とかかり続けます。
このような状況を回避するために相続放棄という選択肢があります。ただし、相続放棄は一度行うと原則撤回できないため、慎重な判断が必要です。
相続放棄を「すべき」ケース
負債が財産を上回る場合
被相続人に多額の住宅ローン残債、事業の連帯保証債務、カードローン等がある場合、相続放棄は有力な選択肢になります。不動産だけを見て「プラスの財産がある」と判断することは危険です。金融機関・クレジットカード会社・信用情報機関への確認も含め、負債の全体像を把握してから決断しましょう。
売れない・貸せない不動産だけを相続する場合
仙台市中心部の不動産は流動性が高いですが、郊外の農地・山林・空き家は売却先が見つからないケースも多々あります。そのような「負動産」を相続した場合、維持費が収入を上回ることが明確であれば、相続放棄を選択する合理性があります。
なお、相続土地国庫帰属制度(2023年施行)を活用すると、一定の条件を満たす土地を国に引き渡すことができます(負担金が必要)。相続放棄とこの制度を比較検討することもひとつの方法です。
相続人間のトラブルを避けたい場合
複数の相続人がいる中で、相続問題に深く関わりたくない場合にも相続放棄が選択されます。ただし、相続放棄によって次の順位の相続人(兄弟姉妹、祖父母等)に相続権が移ることを理解したうえで判断する必要があります。
相続放棄を「すべきでない」ケース
換価価値のある不動産を相続する場合
仙台市内の好立地マンション・戸建て・商業地など、売却・賃貸活用できる不動産であれば、放棄よりも活用を検討すべきです。売却して現金化すれば、負債を返済しても余剰が生じる可能性があります。売却を検討する際の流れは不動産売却ガイドで解説しています。
生命保険金・死亡退職金がある場合
生命保険の死亡保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」として課税対象になりますが、受取人固有の財産であり、相続放棄をしても受け取れます。このため、相続放棄をしつつ保険金を受け取ることは原則として可能です(ただし単純承認とみなされる行為を避ける必要があります)。
被相続人と同居していた不動産がある場合
相続放棄をすると、その不動産の所有権も失います。同居していた実家を手放したくない場合は、小規模宅地等の特例(相続税評価額の最大80%減額)の活用も含め、税理士・弁護士に相談したうえで判断しましょう。
相続放棄の手続きと期限
申述期限:相続開始を知った日から3ヶ月
相続放棄の申述は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に行う必要があります(熟慮期間)。3ヶ月を超えると単純承認したとみなされるため、財産調査や判断は迅速に行うことが重要です。
なお、財産・負債の調査が3ヶ月では難しい場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申立てることができます。
申述先
仙台家庭裁判所(青葉区春日町)が管轄です。相続人の住所地の家庭裁判所でも申述できます。
必要書類(一般的なケース)
- 相続放棄申述書(裁判所のウェブサイトからダウンロード可)
- 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡が連続した全戸籍)
- 申述人の戸籍謄本
- 収入印紙800円 + 連絡用郵便切手
手続きの流れ
- 必要書類を収集する
- 相続放棄申述書を記載・押印する
- 仙台家庭裁判所に郵送または持参で提出する
- 裁判所から「照会書」が届いたら回答して返送する
- 「相続放棄申述受理通知書」が送達されれば手続き完了
弁護士・司法書士に依頼すると費用(3〜10万円程度)がかかりますが、複雑な事案や多数の相続人がいる場合は専門家に依頼するのが安全です。手続き全般について迷う点があれば、よくある質問もあわせて確認してください。
相続放棄後の注意点
不動産の保存義務
2023年の民法改正により、相続放棄後も相続財産(不動産を含む)について「現に占有している場合」は、他の相続人や相続財産清算人が管理できるようになるまで保存義務が継続します。放棄後は管理責任が一切なくなると誤解しないよう注意が必要です。
次の相続人への影響
相続放棄をすると、次の順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹など)に相続権が移ります。相続権が移ることを事前に伝えておかないと、親族間のトラブルに発展するケースがあります。
まとめ:相続放棄は「早めの情報収集」が鍵
相続放棄を検討する際には、以下の順序で判断を進めることをおすすめします。
- 全財産・全負債の把握:不動産登記・金融機関残高・債務の全体像を確認する
- 3ヶ月の熟慮期間内に判断する:必要であれば期間伸長を申立てる
- 専門家(弁護士・税理士・司法書士)に早期相談:複雑な事案ほど早期相談が有効
相続放棄の判断には、対象不動産の資産価値を正しく把握することが欠かせません。エムアセッツ株式会社では売却のお問い合わせを受け付けており、地元の信頼できる仲介会社である株式会社松栄不動産をご紹介しています。まずは専門家への相談と並行して、不動産の状況を整理することから始めましょう。他の相続関連の記事は不動産コラム一覧からご覧いただけます。ご不明な点はお問い合わせよりお問い合わせください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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