賃貸物件に入居中、エアコンが動かなくなった、給湯器から水が出ない、雨漏りが始まった——そんなとき「修理費用は誰が負担するのか」で揉めるケースが少なくありません。2020年4月施行の改正民法では、貸主・借主双方の義務と権利が整理されました。本記事では仙台の賃貸物件を念頭に、修繕義務の全体像を解説します。
賃貸の修繕義務は原則として貸主(オーナー)が負う
民法601条・606条に基づき、賃貸物件の修繕は貸主(オーナーまたは管理会社)が行う義務を負います。これは設備の老朽化・経年劣化・偶発的な故障いずれの場合も原則として同様です。
入居者が「給湯器が壊れた」と連絡してきたにもかかわらず、貸主が合理的な期間内に修繕しない場合、入居者は家賃を減額請求できます(民法611条)。2020年の改正により、この減額請求は「できる」から「当然に減額される」と規定が強化されました。
修繕義務の範囲
貸主が修繕義務を負う主な設備は以下のとおりです。
- 給湯器・ボイラー(老朽化・自然故障)
- エアコン(貸主設備の場合)
- 水道・排水管の故障・詰まり(入居者の行為が原因でない場合)
- 屋根・外壁の雨漏り
- 共用部の照明・エレベーター
- 入口扉の鍵(施錠機能の不具合)
例外|借主(入居者)の責任で修繕が必要なケース
すべての修繕が貸主負担になるわけではありません。以下の場合は入居者が費用を負担する必要があります。
入居者の過失・不注意による破損:扉を強く閉めてガラスを割った、床をひっかいて傷つけた、など入居者の行為に起因する場合は入居者の負担です。
日常的な消耗品の交換:電球・蛍光灯・電池など、消耗品の交換は原則として入居者が行います。
入居者による改造・変更:無断でエアコンを付け替えたり壁に穴を空けたりした場合、その復旧は入居者の責任です。
改正民法では、入居者が修繕の必要を「知りながら貸主に通知しなかった」場合も入居者の責任が生じると明示されました(民法615条)。
緊急修繕とは|入居者が自ら修繕できるケース
2020年の改正民法で新設された規定が「緊急修繕」です(民法607条の2)。
次の条件を両方満たす場合、入居者が自ら修繕業者を手配し、貸主に費用を請求することが法律上認められるようになりました。
- 急迫の事情がある:真冬に給湯器が壊れて入浴できない、水道管が破裂して水が止まらないなど、生活に著しい支障が生じている状態
- 貸主に通知したが対応が得られない:連絡が取れない、対応を拒否された、などの状況
仙台の冬は積雪・凍結も多く、暖房・給湯設備のトラブルは緊急修繕に該当しやすい状況です。ただし緊急修繕を行った場合は証拠の保全が重要です。
緊急修繕時に入居者が行うべき手順
緊急修繕を適正に行い、後で費用を確実に回収するためには以下の手順が有効です。
ステップ1:貸主・管理会社への連絡記録を残す
電話だけでなく、メール・LINEなど書面として残る方法で故障の状況と修繕依頼を通知します。返答がない場合はその記録も保全してください。
ステップ2:応急処置と業者手配の記録
修繕業者に連絡した日時、業者名、見積もり額を記録します。複数社に見積もりを求めると、費用の合理性を示す証拠になります。
ステップ3:修繕完了後に領収書を保管
修繕にかかった費用の領収書・作業報告書を必ず入手し、貸主に費用の清算を請求します。貸主が支払いを拒否する場合は、不当利得返還請求や損害賠償請求の根拠となります。
仙台でよく発生する修繕トラブルのケース別整理
ケース1:真冬の給湯器故障
給湯器の自然故障は貸主の修繕義務です。対応が遅れた日数分の家賃減額請求も可能です。入居者から緊急の連絡を受けた場合、貸主・管理会社はできる限り翌日以内の業者手配を目指すべきです。
ケース2:排水管の詰まり
入居者の過失(大量の油・異物を流したなど)が原因の場合は入居者負担。経年劣化や建物の構造的問題であれば貸主負担です。原因が不明な場合は業者の診断書が根拠となります。
ケース3:エアコンの故障
貸主設備(入居前から設置)の場合は貸主が修繕義務を負います。入居者が自ら追加設置したエアコンは入居者の管理責任です。
ケース4:窓・扉の建てつけ不良
経年劣化による建てつけの悪化は貸主負担。入居者が強い力で開閉して変形させた場合は入居者負担になります。
修繕費用の負担割合を事前に明確にする方法
トラブルを未然に防ぐには、賃貸借契約書の特約条項と入居時の設備チェックリストを活用することが有効です。
契約書に「入居者が負担する修繕の範囲」を明記し、双方が署名することで認識のズレを防げます。ただし、民法の強行規定(修繕義務を貸主から完全に排除する特約など)に反する条項は無効となる場合があります。
国土交通省のガイドラインである「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も参照すると、費用負担の基準を整理しやすくなります。
まとめ|連絡・記録・迅速対応が双方の利益につながる
賃貸物件の修繕は、放置すれば入居者の生活の質を損ない、退去につながるリスクがあります。入居者・貸主の双方にとって、早期の連絡と迅速な対応が最善策です。
- 入居者は故障に気づいたら速やかに書面で連絡し、緊急時は証拠を残しながら対応する
- 貸主は合理的な期間内に修繕業者を手配し、放置による家賃減額リスクを避ける
- 契約書に修繕の範囲と費用負担を明記しておくことで、後日のトラブルを防ぐ
仙台の不動産に関するご相談は、地域の実情を熟知したエムアセッツにお気軽にお問い合わせください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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