受水槽(じゅすいそう)を設置している賃貸アパート・マンションには、水道法に基づく管理義務が課されています。屋上や地下にタンクを設置し、そこから各住戸へ給水する古いタイプの建物では、この義務を見落としているケースも少なくありません。仙台エリアで賃貸物件を所有・管理するオーナーが知っておきたい、受水槽の点検・清掃義務について整理します。
受水槽方式とは
マンションやビルの給水方式には、大きく分けて「直結方式」と「受水槽方式」があります。直結方式は水道本管の水圧をそのまま利用して各住戸へ給水する方式で、近年の中低層物件で主流になっています。一方、受水槽方式は、いったん建物内や敷地内のタンク(受水槽)に水を貯め、そこからポンプや高置水槽を経由して各住戸へ給水する方式です。建物の階数が高い、水圧が不足するといった事情から、築年数の古いマンションやビルでは受水槽方式が採用されていることが多くあります。
簡易専用水道に該当する基準
水道法では、受水槽の有効容量によって管理上の位置づけが分かれます。
- 受水槽の有効容量が10立方メートル(10m³)を超える場合 → 「簡易専用水道」に該当し、水道法第34条の2に基づく管理義務が課される
- 10立方メートル以下の場合 → 「小規模受水槽水道」として扱われ、水道法の直接的な適用対象外だが、多くの自治体(仙台市を含む)では条例やガイドラインにより準じた管理基準が求められることがある
出典: 水道法 第34条の2(e-Gov 法令検索)・水道法施行令 第2条(有効容量の合計が10立方メートル)
簡易専用水道に該当する場合、設置者(建物の所有者や管理者)には主に次の義務が課されます。
- 水槽の清掃を年1回以上行うこと
- 国土交通省令で定める基準に従い、水槽の点検など適切な管理を行うこと
- 定期的な検査(年1回以上)を受け、その結果を保存すること
- 給水栓における水質に異常を認めたときは、必要な水質検査を行うこと
これらの義務を怠り、利用者の健康に被害が生じる、または生じるおそれがあると認められる場合には、自治体から改善のための指導や、水道法に基づく報告徴収・立入検査の対象となることがあります。
オーナー・管理会社が実務で確認しておきたいこと
賃貸経営において受水槽の管理は、入居者の生活に直結する重要な設備管理項目です。以下の点を確認しておくと安心です。
- 所有・管理する物件の受水槽の有効容量が10立方メートルを超えているかどうか
- 直近の水槽清掃・検査がいつ行われ、結果はどうだったか(記録の保存状況)
- 検査を委託している業者との契約内容と、次回検査の予定時期
- 老朽化した受水槽がある場合、直結給水方式への切り替えや設備更新の検討状況
管理会社に建物管理を委託している場合でも、最終的な責任は建物の所有者にあることを踏まえ、清掃・検査の実施記録を定期的に確認しておくことが望ましいでしょう。管理を自主管理で行っているオーナーの場合は、登録検査機関や水道局の窓口に相談しながら、検査スケジュールを組んでおくことをおすすめします。
水質トラブルを防ぐための日常的な視点
受水槽を経由する給水方式では、タンク内の水が長期間滞留したり、清掃が不十分だったりすると、水質が劣化するリスクがあります。入居者から「水のにおいが気になる」「水が濁っている」といった相談があった場合は、単なる配管の問題と決めつけず、受水槽の状態を確認する視点も持っておくとよいでしょう。特に空室が続いて使用水量が少ない期間がある建物では、水の滞留が起きやすくなるため注意が必要です。
まとめ
受水槽を持つ賃貸物件のオーナーにとって、簡易専用水道の管理義務は見落とされがちですが、入居者の安全な暮らしを支える基本的な設備管理の一つです。有効容量10立方メートルという基準を軸に、自分が所有する物件がどちらに該当するのかを把握し、清掃・検査の記録を定期的に確認する習慣をつけておきましょう。
直結給水方式への切り替えという選択肢
築年数の古い建物では、受水槽や高置水槽の老朽化に合わせて、水道本管から直接給水する「直結増圧方式」への切り替えを検討するオーナーも増えています。直結方式に切り替えると、タンク内での水の滞留がなくなるため水質管理がしやすくなり、受水槽の清掃・検査義務そのものからも外れます。また、屋上の高置水槽を撤去できれば、その分の建物荷重や維持管理コストの軽減にもつながります。
一方で、切り替えには増圧ポンプの設置工事など一定の費用がかかるほか、水道本管の水圧や引き込み管の口径によっては対応できない場合もあります。水道局への事前相談と、既存設備の劣化状況・改修費用を踏まえた比較検討が必要です。
検査記録は資産管理の一部として保存する
簡易専用水道の検査結果や清掃記録は、単なる法令対応のためだけでなく、物件の資産価値を示す資料としても役立ちます。売却や大規模修繕のタイミングで給水設備の状態を説明する際、過去の検査記録が整理されていれば、購入検討者や工事業者への説明がスムーズになります。日頃から検査結果を保管し、必要に応じてすぐに提示できる状態にしておくことをおすすめします。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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