賃貸併用住宅の「出口」を考えることが重要な理由
賃貸併用住宅は、住宅ローンを活用しながら家賃収入を得られる魅力的な不動産形態です。しかし、多くのオーナーは取得時のメリット(住宅ローン・家賃収入・節税効果など)に目が向きがちで、将来の出口——つまり売却・相続・解消をどうするかを後回しにしがちです。
実際には、賃貸併用住宅は出口戦略が難しい物件類型の一つです。その理由は以下の通りです。
- 買主層が限られる:自宅用として購入する実需層と、投資用として購入する投資家層の双方に対して中途半端になりやすい
- 建物規模が大きくなりがち:賃貸部分を含めると建物が大型化し、売却価格帯が高くなり流通性が低下する
- 住宅ローンの残債問題:売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」状態になると売却が困難になる
取得前、または取得後の早い段階から出口戦略を意識することが、賃貸併用住宅経営の成否を左右します。
賃貸併用住宅を売却するときの3つのルート
売却を検討する際は、以下の3つのルートを状況に応じて選択します。
①実需(住宅)として売却
賃貸部分を自用(自宅拡張・2世帯利用等)にするオーナーに売る方法です。買主は自宅として購入できるため、住宅ローンを使った取得が可能です。ただし、賃借人が入居中の場合は立退き交渉が必要になります。
②投資物件として売却
収益性(利回り)を重視する投資家に売る方法です。賃借人付きのまま(いわゆる「オーナーチェンジ」)で売却できるため、立退き交渉が不要です。ただし、自宅部分が空室となる点が投資家にとってマイナス要因になることもあります。表面利回りが4〜6%程度あると仙台市内では一定の需要が見込めます。
③賃貸用途に特化して再販
自宅部分もリフォームして賃貸転用した上で、収益物件として売却するルートです。元の自宅部分の用途変更・修繕費が発生しますが、空室を埋めてから売ることで価格が安定しやすくなります。
売却価格と住宅ローン残高の関係
賃貸併用住宅を売却する際に最初に確認すべきなのが、住宅ローンの残高と売却見込み価格の差です。
- 売却価格 > ローン残高:手元にキャッシュが残る。問題なく売却できる
- 売却価格 ≒ ローン残高:諸費用(仲介手数料・登記費用等)の自己負担が必要
- 売却価格 < ローン残高(オーバーローン):自己資金で差額を補填しないと抵当権が抹消できず売却が難しい
特に建築後5〜10年は住宅ローン残高が多い時期であり、建物の減価もあるためオーバーローンになりやすい期間です。仙台市内でも人口動態や地域需要によって不動産価格は変動するため、定期的に不動産査定を受けて資産状況を把握しておくことをおすすめします。
相続時の賃貸併用住宅:評価と分割のポイント
賃貸併用住宅を保有したまま相続が発生した場合、いくつかの特有の問題が生じます。
相続税評価の仕組み
賃貸部分がある場合、土地・建物の相続税評価額は以下のように軽減されます。
- 建物評価:賃貸部分は「借家権割合(30%)× 賃貸割合」の分だけ評価を下げられる
- 土地評価:貸家建付地として「借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」分の評価減が適用される
- 小規模宅地等の特例(特定居住用):自宅部分の土地(上限330㎡)は80%評価減の特例あり
賃貸割合が高いほど評価が下がるため、節税効果が大きくなります。ただし、相続直前に入居率を意図的に操作(形式的な賃貸)した場合、税務署に否認されるリスクがあります。
遺産分割の難しさ
賃貸併用住宅は「住んでいる相続人」と「住んでいない相続人」の間で利害が対立しやすい不動産です。代償分割(他の相続人に金銭を払って不動産を単独取得する方法)か、共有分割か、売却して現金分割するかを事前に話し合っておくことが重要です。
賃貸部分の解消・用途変更という選択肢
「子どもが成長して自宅を広げたい」「高齢になって賃貸管理が負担になった」という場合、賃貸部分を自用に転換する選択肢もあります。
- 入居者の立退き:正当事由が必要(賃貸借契約の内容・立退き料の交渉)。6ヶ月以上前の通知が原則
- リフォーム費用:用途転換に伴う内装・設備変更が必要なケースが多い
- 住宅ローンへの影響:賃貸部分を自用にすると賃貸収入がなくなるため、返済計画の見直しが必要
なお、賃貸部分をなくすと固定資産税の住宅用地特例は全体に適用されますが、賃貸収入による節税効果は失われます。
まとめ:出口を見据えた賃貸併用住宅の取得・保有
賃貸併用住宅は取得時の住宅ローン活用・家賃収入・節税効果が注目されますが、出口戦略(売却・相続・解消)を事前に設計しておくことが長期的な資産防衛の鍵です。仙台市内では立地・築年数・賃貸割合によって流動性が大きく変わります。定期的な資産価値の確認と専門家への相談を欠かさないことをおすすめします。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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