なぜ空室が埋まらないのか――原因の見極めが先決
賃貸経営において空室は直接的な収益減につながります。しかし「とにかく家賃を下げれば埋まる」という思考は、長期的には物件の収益力を損なうだけです。空室対策を始める前に、まず「なぜ空室が生じているのか」を正確に把握することが不可欠です。
空室長期化の主な原因は大きく三つに分類できます。
需給バランスの問題:エリアの供給過多や人口減少により、そもそも入居希望者が少ない状態です。仙台市内でも、都心部と郊外部では需要の差が顕著で、同じ間取り・築年数でも成約スピードは大きく異なります。
物件の競争力不足:同エリアの競合物件と比べて、設備・内装・家賃のいずれかで見劣りしている状態です。特に2020年以降、入居希望者はポータルサイトで複数物件を横比較するため、写真品質や設備スペックが一目で判断されます。
募集活動の問題:物件自体には競争力があるにもかかわらず、情報が十分に届いていないケースです。掲載サイトが少ない、写真が古い、物件説明が不十分といった理由で検索にかかりにくくなっています。
この三つのどこに問題があるかを見極めたうえで、対策を打つことが重要です。
掲載情報の質が成約率を左右する
入居希望者の9割以上がポータルサイトで物件を検索する時代です。掲載情報の質は、内見申込数に直結します。
写真は「明るさ」と「広角」が命
スマートフォンで撮影した暗い写真は、物件の印象を大きく損ないます。晴れた日の昼間に、広角レンズを使って部屋を広く見せることが基本です。窓を背にして撮影すると逆光になるため、窓の横や斜め前から光を取り込みながら撮影しましょう。
撮影必須のカットは以下の順番で優先します。
- 各居室(窓際から部屋全体)
- キッチン(コンロ・収納の使いやすさが伝わるアングル)
- 浴室・洗面台(清潔感が最重要)
- 玄関・廊下
- 外観・エントランス
- 共用廊下・駐輪場などの共用部
- 眺望がある場合はバルコニーからの眺め
写真の枚数は最低15〜20枚を目安にします。枚数が多いほど検索結果での表示優先度が上がるポータルサイトも多く、内見前に物件を「体験」してもらえます。
物件説明文で「生活イメージ」を伝える
「2LDK・築10年・南向き」といったスペック羅列ではなく、「朝の光が入る明るいリビングで、職場まで地下鉄で15分の快適な立地」のように生活シーンを想像させる文章が有効です。近隣のスーパーやコンビニ、公園、学校区なども具体的に記載すると、子育て世帯や通勤者の琴線に触れやすくなります。
家賃設定の見直し――価格と付加価値のバランス
家賃は下げればすぐ埋まるかもしれませんが、一度下げると元に戻しにくく、収益計画が狂います。まずは「家賃以外の魅力」を高める施策を検討しましょう。
初期費用の軽減で問い合わせを増やす
仙台市の賃貸市場では、敷金・礼金ゼロの物件が増えており、初期費用の多寡が問い合わせ数に大きく影響しています。礼金をゼロにする代わりに、フリーレント(無料期間)を1〜2ヶ月設定する方法は、オーナーの実損を抑えながら入居者の心理的ハードルを下げる効果的な手法です。
設備投資で家賃を維持する
同エリアの競合物件に無い設備を追加することで、家賃を下げずに競争力を高められます。仙台市内で入居者に特に喜ばれている設備は次の通りです。
- 宅配ボックス(不在時の受け取りニーズが急増)
- 独立洗面台(バス・トイレ別が前提になりつつある)
- 追い焚き機能付きバス
- インターネット無料(月額2,000〜3,000円相当が家賃無料扱いに)
- エントランスオートロック
設備投資は初期費用がかかりますが、家賃を5,000円/月維持できれば年間6万円の差。数年で回収できる場合が多いです。
内見対応で成約率を上げる
問い合わせがあっても内見で「決め手に欠ける」と感じさせてしまうと成約には至りません。内見前の準備と当日の対応が成約率を左右します。
内見前のセルフクリーニング
管理会社に任せっきりにせず、オーナー自身も内見前に物件の状態を確認する習慣をつけましょう。特に確認すべきポイントは以下の通りです。
- 換気扇・水回りの汚れや臭い
- クロスの黄ばみや剥がれ
- 照明の切れ
- 窓・サッシのホコリ
- 共用廊下や郵便受けの清掃状態
クリーニング直後でも時間が経つと臭いが戻ることがあります。内見前日に換気を十分に行い、消臭スプレーではなく自然換気でリセットするのが基本です。
内見時間帯の工夫
条件が同じなら、日当たりの良い時間帯に内見してもらう方が有利です。南向きの物件なら午前中から昼過ぎ、東向きなら午前中を積極的に提案しましょう。管理会社に「できれば午前中の内見を優先してほしい」と依頼しておくだけでも印象が変わります。
募集チャネルの多角化
SUUMO・HOME'S・at homeのいずれか一つに掲載しているだけでは、リーチできる層に限りがあります。特に仙台市では以下のチャネルも活用する価値があります。
法人仲介のルートを開拓する:転勤族が多い仙台市では、法人(企業の社宅担当)経由の問い合わせが一定数あります。近隣の企業や仲介業者に物件チラシを持参するだけで、ポータルに掲載されない法人需要を取り込める場合があります。
SNSと動画の活用:YouTubeやInstagramで物件の動画を公開することで、ポータルサイトでは伝わらない「住んでいる感覚」を届けられます。特に若い単身者層へのアプローチに有効です。
学生・転勤者専門サイト:仙台市には東北大学・東北学院大学など複数の大学があり、学生向け専門ポータルへの掲載が効果的な物件もあります。
定期的なPDCAで空室を長期化させない
空室対策は一度やって終わりではなく、継続的な改善が必要です。月に一度、以下の指標を管理会社から入手して確認する習慣をつけましょう。
- ポータルサイトの掲載ページ閲覧数
- 問い合わせ数(電話・メール)
- 内見申込数
- 成約率(内見→申込の転換率)
閲覧数が少ない場合は掲載情報の改善、問い合わせは来るが内見につながらない場合は家賃・初期費用の見直し、内見は来るが成約しない場合は物件のコンディション改善、と原因別に対策を打てます。
空室は「埋まらない理由」が必ずあります。その原因を特定し、データをもとに改善を積み重ねることが、安定した賃貸経営への近道です。エムアセッツでは仙台市内の賃貸物件を中心に、オーナー様の空室対策・入居者募集をサポートしています。お気軽にご相談ください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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