賃貸でDIYはどこまで許される?
近年、賃貸物件に住みながらも自分らしい部屋にカスタマイズしたいというニーズが高まっています。インテリア雑誌やSNSでは「賃貸でもできるDIY」が数多く紹介されており、実際に試してみる方も増えています。
しかし、賃貸物件でのDIYには「原状回復義務」という大きな制約があります。退去時に元の状態に戻せなければ、敷金から修繕費用を差し引かれるだけでなく、追加費用を請求されることもあります。
この記事では、賃貸入居者が知っておくべきDIYのOK・NG範囲と、退去時に問題にならないためのポイントを解説します。
原状回復義務の基本的な考え方
賃貸契約における「原状回復」とは、入居者が故意・過失・善管注意義務違反などによって生じた損傷を修復する義務のことです。国土交通省のガイドラインでは、原状回復の費用負担の範囲が明確にされています。
重要なのは、「通常の使用による損耗・経年変化」は入居者の責任ではないという点です。例えば、日焼けによる壁紙の変色や通常の生活で生じる小さな傷は、オーナー(大家さん)が負担すべきものとされています。
一方、入居者がDIYや改造によって生じた変化は、元の状態への回復が入居者負担となるのが原則です。
壁(クロス・壁紙)のDIY
OKなDIY
粘着力の弱い「賃貸向けシール・マスキングテープ」の使用
壁紙を傷めない弱粘着の養生テープやマスキングテープを使った装飾は、適切に使用すれば原状回復が可能です。コマンドストリップ(3M製など)のような「跡が残らない」を謳う両面テープも多く市販されています。ただし、使用期間が長くなると糊が残ることがあるため注意が必要です。
ウォールステッカー(貼ってはがせるタイプ)
リムーバブルのウォールステッカーであれば、跡が残らずに装飾できます。退去時に剥がせるものを選ぶことが重要です。
絵・ポスター・鏡(ピンレス・粘着フック)
壁に穴を開けない粘着フックや磁石式フックであれば、クロスを傷めずに使用できます。
NGまたは要注意なDIY
壁に直接穴を開ける(ビス・クギ打ち)
画鋲程度の小さな穴はガイドライン上「通常の生活で生じる損耗」として扱われることが多いですが、ネジ・ビス・クギを使った穴は修繕費用を請求される可能性があります。特に下地まで達するような大きな穴は要注意です。
壁紙の貼り替え・ペイント
壁紙を自分で貼り替えたり、ペンキで塗装した場合、退去時に元の壁紙への張り替え費用を請求されます。一部の「DIY可賃貸」物件を除き、原則NGです。
漆喰・珪藻土の塗り付け
既存壁紙の上に漆喰や珪藻土を塗る行為は、退去時の除去と壁紙張り替えが必要となり、高額な修繕費が発生します。書面で大家さんの許可を得た場合を除き避けてください。
床(フローリング・カーペット)のDIY
OKなDIY
ジョイントマット・フロアタイルの敷設
床に置くだけのジョイントマット、コルクマット、フロアクッションは取り外し可能なため原状回復が容易です。床暖房がある場合は対応品を選んでください。
ウッドカーペット・フロアシート
賃貸用のウッドカーペットやPVCフロアシートを敷く場合は、粘着テープで固定せず「置くだけ」のタイプが安心です。
NGまたは要注意なDIY
フロアタイルの接着剤固定
市販のフロアタイルを接着剤で貼り付けた場合、退去時の除去で既存床材が損傷し、高額な原状回復費用が発生するリスクがあります。
床材の研磨・ニス塗り
フローリングのキズが気になっても、自己判断で研磨・ニス塗りを行うことは禁物です。既存の表面処理との不一致が生じ、全面的な張り替え費用を請求される場合があります。
カーペットの接着固定
グリッパーや接着剤でカーペットを固定した場合、除去時に床材を傷める可能性があります。
照明・電気設備のDIY
OKなDIY
シーリングライトの交換
部屋に設置されているシーリングライトは、入居者が自由に取り外し・交換できることが多いです(元の照明器具を保管しておき退去時に戻す必要あり)。最初から照明器具がない場合のシーリングローゼットへの取り付けは問題ありません。
延長コード・タップの使用
通常の電気器具の使用・配置変更は自由に行えます。
NGまたは要注意なDIY
コンセントの増設・配線工事
電気工事は「電気工事士」の資格が必要な場合があり、入居者が勝手に行うことは禁止されています。また、壁への穴開けを伴う配線工事はオーナーの許可が必須です。
照明器具(シーリング以外)の設置
ダウンライトやブラケットライトなど、既存配線以外に新たな照明を設置するための電気工事は原則NGです。
棚・収納のDIY
OKなDIY
突っ張り棒・突っ張りラックの活用
天井と床の間に固定する突っ張り棒・突っ張りラックは、壁に穴を開けないため退去時の原状回復も容易です。ただし、強い力をかけすぎると壁紙や天井に跡が残る場合があります。
ラブリコ・ディアウォール(2×4アジャスター)
2×4の木材を使ったDIY用アジャスターは、床と天井のみに圧力をかけるため壁を傷めません。落下防止対策をしっかり行えば、原状回復にも対応しやすいDIYです。
NGなDIY
棚受けブラケットの壁固定(ビス打ち)
壁に棚受けをビスで固定した場合、退去時に穴が残り補修費用が発生します。穴の大きさ・数によっては壁紙全面張り替えとなるケースもあります。
DIYをする前に確認すべきこと
賃貸契約書・特約を必ず確認
契約書の「禁止事項」や「特約」に、壁紙の貼り替えや釘打ちについての記載がある場合があります。「DIY可能」と明記された特約がある物件では、より広範なカスタマイズが認められることがあります。
大家さん・管理会社への事前確認が鉄則
「OKとNGの境界線」は契約内容や大家さんの方針によって異なります。大がかりなDIYを検討している場合は、必ず書面(メールを含む)で事前に許可を得ることをおすすめします。口頭での許可は後から「そんなことは言っていない」とトラブルになりやすいため、証拠が残る形での確認が重要です。
施工前・施工後の写真を保存する
DIYを行った場合は、施工前後の写真を撮影しておきましょう。退去時の査定で「入居前からあった」か「入居者が作った」かの確認が必要になった場合に、証拠として役立ちます。
まとめ:「元に戻せる」を基準にDIYを楽しむ
賃貸でのDIYの基本ルールは、「退去時に原状回復できるかどうか」です。
- 粘着力が弱い・置くだけ・突っ張り系のDIYはリスクが低い
- 穴を開ける・塗る・貼り替えるDIYは事前に大家さんの許可が必要
- 許可を得る場合は書面で残すこと
賃貸物件でも、原状回復ができる範囲内で工夫することで、自分らしい住空間を作ることは十分可能です。退去時に不要なトラブルや追加費用を避けるためにも、ぜひ参考にしてください。
賃貸に関するその他の疑問はよくある質問もご覧ください。エムアセッツの物件に関するご不明点はお問い合わせはこちらよりお問い合わせください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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