認知症発症後、親の不動産はどうなるのか
親が認知症を発症し、判断能力が著しく低下した場合、その親が所有する不動産はいわゆる「凍結」状態になります。
具体的には以下のことができなくなります:
家族が善意で行っても、法的に無効な行為となってしまいます。こうした問題を解決するために用意されているのが成年後見制度です。
成年後見制度の2つの種類
法定後見(任意後見との違い)
法定後見は、すでに判断能力が低下・喪失した場合に、家庭裁判所が「後見人」を選任する制度です。
| 区分 | 対象者の状態 |
|---|---|
| 後見(こうけん) | 判断能力が常に欠けている状態 |
| 保佐(ほさ) | 判断能力が著しく不十分な状態 |
| 補助(ほじょ) | 判断能力が不十分な状態 |
認知症の程度によってどの区分になるかが変わります。不動産の売却・賃貸には通常「後見」または「保佐」レベルの判断が必要です。
任意後見は、判断能力があるうちに本人が信頼する人を後見人として指定しておく制度です。「発症前に設定」が前提であり、発症後は使えません。
本稿では主に発症後でも利用できる「法定後見」を中心に解説します。
法定後見の申立て手順
ステップ1:申立先の確認
法定後見(後見開始)の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
仙台市の場合:仙台家庭裁判所
- 所在地: 仙台市青葉区片平1-6-1
- 電話: 022-222-4165
ステップ2:必要書類の収集
申立てに必要な主な書類:
ステップ3:申立てと審判
書類が揃ったら仙台家庭裁判所に申立てを行います。審判が下されるまでの標準的な期間は2〜4ヶ月程度です。緊急性が高い場合は審判前の保全処分(仮処分)を申立てることも可能です。
ステップ4:後見人の選任
家庭裁判所が後見人を選任します。家族が後見人候補として申立てた場合でも、必ずしも家族が選任されるとは限りません。財産規模が大きい場合や家族間の意見対立がある場合は、弁護士・司法書士などの専門職後見人が選任されることが多いです。
後見人の権限と制限
不動産に関する権限
後見人は本人を代理して以下のことができます:
- 不動産の賃貸借契約の締結・解除
- 修繕・維持管理の発注
- 不動産の売却(ただし居住用は家庭裁判所の許可が必要)
重要: 本人が住んでいる居住用不動産の売却は、家庭裁判所の許可を得た上でなければできません。「施設に入居したから自宅を売却する」という場合でも、裁判所への申請・許可取得が必要です。
後見人ができないこと
後見人は基本的に「本人の財産を守る」立場であり、資産運用・相続対策・贈与は原則できません。家族が期待するような「節税対策」「資産組換え」は後見制度の枠外です。
費用の目安
申立て費用
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 申立て手数料 | 800円 |
| 登記手数料 | 2,600円 |
| 鑑定費用(必要な場合) | 5〜10万円 |
| 書類収集費用 | 数千円〜1万円程度 |
弁護士・司法書士に申立て手続きを依頼する場合は、別途10〜20万円程度の報酬が発生します。
後見人報酬(継続費用)
後見人が選任されると、本人の財産から毎月後見人報酬が支払われます。
| 財産規模 | 月額報酬の目安 |
|---|---|
| 1,000万円未満 | 月2万円程度 |
| 1,000〜5,000万円 | 月3〜4万円程度 |
| 5,000万円超 | 月5〜6万円以上 |
専門職後見人(弁護士・司法書士)が選任された場合はこれ以上になる場合があります。また、後見は本人が亡くなるまで続くため、長期間にわたる継続的な費用が発生する点を認識しておく必要があります。
家族信託・任意後見との比較
| 比較項目 | 法定後見 | 家族信託 | 任意後見 |
|---|---|---|---|
| 設定時期 | 発症後でも可 | 発症前のみ | 発症前のみ |
| 管理者の選択 | 裁判所が決定 | 家族が自由に設計 | 本人が事前に指定 |
| 資産運用の柔軟性 | 低い | 高い | 中程度 |
| 継続費用 | 毎月発生 | ほぼなし | 後見監督人報酬 |
発症前に家族信託や任意後見の準備ができていれば、法定後見よりも家族の意思が反映されやすく、費用も抑えられます。
仙台での相談窓口
- 仙台家庭裁判所: 申立て手続きの説明・書類の確認
- 仙台司法書士会: 成年後見に詳しい司法書士の紹介・相談
- 仙台弁護士会: 法的サポートが必要な場合の相談
- 仙台市社会福祉協議会: 判断能力が不十分な方の日常生活支援相談
まとめ
仙台で親が認知症を発症した後に不動産を管理するには、法定後見制度を利用するのが原則的な方法です。申立てから後見人選任まで数ヶ月かかるため、早期に手続きを開始することが重要です。
発症後の法定後見は柔軟性が低く費用も継続的にかかるため、理想的には発症前に家族信託・任意後見などの対策を講じておくことが望ましいです。すでに認知症が進行している場合は、仙台家庭裁判所や地元の司法書士・弁護士に早急に相談することをおすすめします。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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