賃貸物件に住んでいると、網戸が破れていたり穴が開いたりするトラブルが起きることがあります。そのとき「この修理費用は自分が払わなければいけないのか、それとも大家さん(貸主)が負担してくれるのか」と迷う方は多いでしょう。
網戸の修繕は費用が比較的小さいように思えますが、退去時の精算でトラブルになるケースも少なくありません。この記事では、国土交通省のガイドラインをもとに、賃貸における網戸の費用負担の考え方・費用相場・原状回復ルールについて詳しく解説します。
網戸の費用負担の基本的な考え方
賃貸物件の修繕費用の負担については、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下、国交省ガイドライン)が重要な判断基準となります。2023年時点の最新版も、基本的な考え方は変わっていません。
借主(入居者)が負担するケース
借主の故意または過失(うっかりミスを含む)による損傷は、借主の負担が原則です。網戸に関しては次のような例が該当します。
- 子どもやペットが網戸を押して穴を開けた
- 物をぶつけて破損させた
- 引っ張って枠から外れ、変形させてしまった
これらは「通常の使用では起きないダメージ」であるため、退去時に修繕費用を請求される可能性があります。
貸主(大家・管理会社)が負担するケース
一方、以下のような場合は貸主側の負担とみなされます。
- 経年劣化(長年の使用による自然な劣化)による破れや穴
- 入居前からすでに傷んでいた箇所
- 紫外線・風雨による素材の脆化
網戸の素材(ポリプロピレン製ネットなど)は紫外線に弱く、年数が経つと自然に劣化します。10年以上経過した物件では、網戸が自然に脆くなっていることも珍しくありません。そのような場合は借主の負担にはなりません。
張り替え費用の相場
網戸の張り替え費用は、部屋数・窓のサイズ・使用するネットの素材によって異なります。2026年時点の目安は以下の通りです。
| 規模 | 費用の目安 |
|---|---|
| 標準サイズ(腰高窓・幅90cm程度)1枚 | 3,000〜8,000円程度 |
| 大きめサイズ(掃き出し窓・幅180cm程度)1枚 | 6,000〜15,000円程度 |
| 高機能ネット(防虫・防風・ペット対応など)への変更 | 追加で2,000〜5,000円程度 |
上記はネット張り替えのみの費用です。枠(フレーム)の破損や変形がある場合は、枠の交換費用が別途必要になります。フレーム交換は1枚あたり10,000〜30,000円程度かかる場合があり、張り替えより大幅に高くなることがあります。
退去時に費用を請求される場合、借主が実際に負担する金額は「借主の使用期間に応じた按分(あんぶん)」が考慮されることもあります。ただし、網戸ネットの耐用年数は建物の耐用年数と異なり、明確な基準がないため、トラブルになりやすいポイントでもあります。
網戸の耐用年数とガイドライン上の扱い
「網戸 耐用年数 ガイドライン」で調べる方が多いように、退去精算で最も揉めやすいのがこの論点です。結論からいうと、国交省ガイドラインには網戸ネットの耐用年数を定めた明確な記載はありません。
ガイドラインでは、襖紙・障子紙のような「消耗品」は経過年数を考慮せず張り替え費用を負担する扱いとされる一方、クロス(壁紙)や設備機器は経過年数に応じて借主の負担割合を減額する考え方が示されています。網戸ネットはこのどちらに寄せて扱うかが物件・管理会社によって分かれるのが実情で、
- 消耗品に準じる扱い:経過年数を考慮せず、破損させた借主が張り替え費用を全額負担
- 経年劣化を考慮する扱い:入居年数が長いほど借主の負担割合を減額
の両方の運用例があります。素材面では、一般的なポリプロピレン製ネットは紫外線で脆化するため、5〜10年程度で自然に破れやすくなるのが実態です。入居から長期間経過した後の破れであれば「経年劣化」を主張できる余地が大きくなります。いずれにしても、入居時の状態記録と、破損時の経緯(自然に破れたのか、ぶつけたのか)の説明が負担判断の決め手になります。
自分で張り替えてもいい?DIYの可否と手順
ホームセンターや100円ショップで張り替え用ネット・押さえゴム・ローラーが数百円〜2,000円程度で手に入るため、「自分で張り替えたい」という方も多いでしょう。ただし賃貸では順番が重要です。
必ず管理会社・大家さんに確認してから
網戸も貸主の所有物です。無断で張り替えると、ネットの色・目の細かさ・仕上がりが元と異なる場合に「勝手な模様替え」として退去時にかえって張り直し費用を請求されるリスクがあります。「自分の過失で破いたので自費で張り替えたい」と連絡すれば、DIYを認めてもらえるか、指定業者での修繕になるかを案内してもらえます。
DIYが認められた場合の基本手順
- 網戸を外して平らな場所に置き、古いネットと押さえゴムを外す
- 枠を掃除し、新しいネットを枠より一回り大きく仮置きする
- ローラーで押さえゴムを溝に押し込みながらネットを固定する
- たるみがないか確認し、余分なネットをカッターで切り落とす
コツは「ネットを軽く張りながらゴムを入れる」ことと「ゴムのサイズ(太さ)を元と同じにする」ことです。たるみ・波打ちが出た仕上がりだと、退去時の立会いで指摘される可能性があるため、自信がなければ業者依頼のほうが結果的に安く済むこともあります。
退去時の原状回復と網戸の扱い
退去時には物件を「入居時の状態に戻す」原状回復が求められますが、国交省ガイドラインでは「通常の使用による損耗・経年劣化は借主が負担しなくてよい」と定められています。
入居時にチェックリストで確認を
入居時に交わされる「入居チェックリスト」や「現状確認書」に、網戸の状態を記録しておくことが重要です。入居前から破れや歪みがあった場合は、その旨を記録・写真撮影しておくと、退去時の不当請求を防げます。
自分で破損させた場合は早めに申告する
借主の不注意で網戸を破損した場合、退去時まで黙っているよりも早めに管理会社や大家さんに連絡して修繕を依頼する方が、最終的なコストを抑えられることがあります。入居中に修繕することで、損傷の拡大を防いだり、適切な費用で対処できたりするためです。
特約の確認も忘れずに
賃貸借契約書に「網戸の張り替えは入退去時に借主が行う」という特約が設けられているケースがあります。このような特約は法的に有効とされる場合もありますが、特約の内容が不当に借主に不利な場合(例:通常の使用でも全額借主負担とするなど)は効力が認められないこともあります。契約時に特約の内容をしっかり確認しましょう。
退去時に網戸の張り替え費用を請求されたら
退去精算で網戸の費用が計上されていた場合、支払う前に次の順で確認しましょう。
- 請求の根拠を確認する:「借主のどのような故意・過失によるものか」の説明を求める。経年劣化・自然損耗であれば借主負担にはなりません
- 入居時の記録と照合する:入居時チェックリストや写真に破れ・歪みの記録があれば提示する
- ガイドラインを引用して交渉する:「国交省の原状回復ガイドラインでは通常損耗・経年劣化は貸主負担とされている」と伝えるだけでも、根拠のない請求は取り下げられることが多い
- 金額の妥当性を確認する:張り替え1枚3,000〜8,000円程度が相場です。相場を大きく超える請求には見積内訳の提示を求める
- 納得できない場合は第三者に相談する:消費生活センター(188)や宮城県宅建協会の相談窓口が利用できます
日常的なメンテナンスで長持ちさせる方法
網戸の寿命は適切なメンテナンスで大幅に延ばせます。日常の手入れとして以下を意識すると、退去時のトラブルリスクも下がります。
定期的な清掃
網戸には外側から砂ぼこり・花粉・排気ガスが付着しやすく、長期間放置すると目詰まりや変色の原因になります。年に1〜2回、柔らかいブラシや乾いた雑巾で軽く拭き取るだけで寿命が延びます。水洗いする場合は、外して浴槽で優しく洗い流すと効果的です。
ペットや小さい子どもがいる場合は強化ネットを検討
ペットや小さい子どものいる家庭では、標準のポリプロピレン製ネットが爪や体重で容易に破れることがあります。管理会社に相談のうえ、ペット対応の強化ネットへの張り替えが認められるか確認しておくと安心です。交換費用の負担の合意を書面で残しておきましょう。
開閉時は丁寧に
網戸を勢いよく開閉すると、枠が歪んだりレールが変形したりすることがあります。日常的な丁寧な扱いが、破損リスクを大幅に減らします。
よくある質問(FAQ)
Q. 賃貸の網戸の張り替えは誰の負担ですか?
原因で決まります。子どもやペットが破った・物をぶつけたなど借主の故意・過失によるものは借主負担、紫外線や風雨による経年劣化・自然な破れは貸主(大家)負担が原則です。国交省の原状回復ガイドラインでも、通常の使用による損耗は借主が負担しなくてよいとされています。
Q. 入居したときから網戸が破れていました。退去時に請求されますか?
入居前からの損傷は借主の負担にはなりません。ただし証明できないと水掛け論になるため、入居時に写真を撮り、入居チェックリストに「網戸破れあり」と記録して管理会社と共有しておくことが重要です。既に入居中の方も、気づいた時点で連絡しておくと退去時のトラブルを防げます。
Q. 網戸を自分で勝手に張り替えてもいいですか?
先に管理会社・大家さんへ連絡するのが原則です。網戸は貸主の所有物のため、無断で張り替えると仕上がりや素材の違いを理由に退去時へ持ち越されることがあります。連絡すればDIY可否や指定業者の有無を案内してもらえます。
Q. 網戸の張り替え費用の相場はいくらですか?
業者依頼の場合、標準サイズ(腰高窓)1枚3,000〜8,000円程度、掃き出し窓など大きめサイズで6,000〜15,000円程度が目安です。枠ごと交換になると1枚10,000〜30,000円程度と高くなります。DIYなら材料費数百円〜2,000円程度で済みますが、賃貸では事前確認が前提です。
まとめ:費用負担の判断で迷ったら管理会社に相談を
賃貸の網戸に関するトラブルは「自分が壊したわけではないのに費用を請求された」「退去時に高額な修繕費を求められた」という形で顕在化することが多いです。
重要なのは、損傷の原因が「借主の故意・過失か」「経年劣化か」という判断です。自分では判断が難しい場合は、入居中であれば管理会社に相談し、退去時であれば立会い時に根拠の説明を求めることが有効です。
賃貸物件の管理や退去時の費用負担についてお困りのことがあれば、仙台市青葉区のエムアセッツ株式会社のお問い合わせフォームよりご相談ください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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