引越し時の「傷」が後でトラブルになる
賃貸物件への入居・退去時に多発するトラブルのひとつが、「引越し作業中に付いた傷の責任の所在」だ。退去時に「この傷はいつ付いたのか」が不明確なまま原状回復費を請求され、入居者が「引越し業者が付けた傷なのに自分が払うのはおかしい」と感じるケースは多い。
また、廊下や共用部への養生が不十分だったために、マンションの共用部に傷を付けてしまい、修繕費を請求されるケースも仙台市内で発生している。
この記事では、引越し時の養生の基本と、傷トラブルを防ぐための実践的な手順を解説する。
養生とは何か:引越し業者が行う保護対策
「養生(ようじょう)」とは、引越し作業中に壁・床・ドア枠・エレベーターなどに傷が付かないよう保護材を貼ったり設置したりする作業を指す。
養生の主な対象箇所
- 玄関ドア・ドア枠: 家具の搬入出時に最も傷がつきやすい箇所
- 廊下の壁・床: 大型家具を運ぶ際に接触しやすい
- エレベーター内壁: マンションの場合、エレベーターへの傷は管理費や修繕費請求につながる
- 部屋の入口・廊下の角: 家具の角が当たりやすい
- 床面(フローリング・カーペット): 重い家具を滑らせる際の引きずり傷を防ぐ
引越し業者が行う養生の内容
大手の引越し業者(サカイ・アート・ヤマトホームコンビニエンスなど)は、通常の引越しパックに養生作業を含んでいる。ただし、業者や料金プランによって養生の範囲・品質は異なる。
安価な格安業者や個人業者の場合、養生が省略・簡略化されることがあるため注意が必要だ。
入居時にすべき「入居前チェック」
引越し作業が始まる前に、現状の傷・汚れをすべて記録しておくことが後々のトラブル防止に直結する。
チェック手順
1. 入居前立会いで管理会社と一緒に確認する
入居時に管理会社の担当者と部屋を一緒に回り、既存の傷・汚れ・設備の不具合を確認する。「入居チェックシート」または「設備確認表」に記入し、双方の署名を残す。
2. スマートフォンで写真・動画を撮影する
全室の壁・床・扉・設備を撮影し、日時入りで保存する。フローリングの傷、壁の染み、設備の欠陥は必ず撮影する。
3. 撮影した記録を管理会社にメールで送付する
「入居時の状態です」と一言添えて送ることで、後から「入居時からあった傷か、入居者が付けた傷か」の争いを防げる。
引越し当日の傷トラブルを防ぐための対策
入居者としてやるべきこと
業者選び:
- 見積もり時に「養生の範囲」を確認する
- 共用廊下・エレベーターへの養生も含まれているか明示してもらう
- 格安業者を選ぶ際は養生内容を事前に確認する
作業前の確認:
- 作業開始前に業者のリーダーと一緒に養生箇所を確認する
- マンションの場合、管理規約で「養生の方法」「使用可能なエレベーター」「作業時間」が定められていることがある。事前に管理組合や管理会社に問い合わせる
作業中・作業後:
- 作業終了後に業者と一緒に部屋・廊下を確認し、新たな傷がないか確認する
- もし引越し業者が傷を付けた場合は、業者の作業中であることを記録(写真)に残し、業者の賠償責任保険で対応してもらうよう求める
傷が発生してしまった場合
引越し業者が付けた傷は、業者が加入している「引越し賠償責任保険」によって補償される。傷を発見したらその場で業者に報告し、後日書面で請求手続きを行う。
「後から言われても…」とならないよう、当日の確認が重要だ。
オーナー向け:入居前・退去後の養生確認と立会い
入居前立会いでの注意点
入居前立会い時に引越し業者の養生が不十分だと判断した場合は、追加の養生を求める権利がある。特に、エレベーターや共用廊下に養生がない場合は立会いで確認する。
マンションのオーナーや管理組合は、「引越し時の養生基準」を管理規約に定めておくとトラブルが減る。
退去後立会い
退去後の立会いでは、入居前の写真と比較しながら傷・汚れを確認する。「入居時から存在していた傷」と「入居者が付けた傷」の区別を明確にするためには、入居前の記録が不可欠だ。
入居前チェックシートを管理会社が適切に保管しているかどうかも、委託先を選ぶ際の判断基準になる。
仙台の冬場の引越しで特に注意すること
仙台の冬(12月〜3月)は積雪・路面凍結があり、引越し作業中に以下のリスクが高まる:
- 荷物の濡れ: 積雪・雨雪で段ボールや家財が濡れるケースがある。ビニールカバーや養生シートで対応する
- 廊下の泥汚れ: 冬場は靴底に雪や泥が付いた状態で室内を歩くことがある。入口に養生マットを敷く
- フローリングの傷: 凍結した靴底が滑り防止のために養生材を外したり押しつけたりして傷が生じることがある
繁忙期(2〜3月)の引越しは業者も多忙で、養生が省略されやすい傾向にある。早めに業者を予約し、養生内容の確認を徹底する。
まとめ
引越し時の傷トラブルは「事前の記録と養生確認」があるかないかで、後の処理がまったく変わる。入居者はスマートフォンで記録を残し、業者との養生確認を怠らないことが最大の防御だ。オーナー・管理会社は入居前チェックシートと写真記録を確実に管理することで、退去時の不毛な争いを防げる。
エムアセッツでは入居時の立会い・チェックシート管理・退去精算のサポートを行っている。引越しトラブルについてのご相談もお気軽にどうぞ。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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