遺留分とは何か
不動産を含む相続では、遺言書によって特定の相続人や第三者に多くの財産を渡す内容が定められることがあります。しかし民法は、配偶者・子・直系尊属(父母や祖父母)といった一定範囲の法定相続人に対し、最低限の取り分を保障する「遺留分」という制度を設けています。遺言や生前贈与によって遺留分を侵害された相続人は、財産を多く受け取った相手に対して金銭で不足分を請求できます。これを「遺留分侵害額請求」と呼び、2019年の民法改正により、以前の「遺留分減殺請求」のように不動産そのものの返還や共有化を求める仕組みから、金銭による解決を原則とする制度に変わりました。
仙台エリアでも、自宅や賃貸アパートといった不動産が遺産の大部分を占めるケースは珍しくありません。現金や預貯金が少なく不動産の評価額が相続財産の中心になっている家庭では、遺留分の問題が表面化しやすい点に注意が必要です。
不動産が絡む遺留分侵害はなぜ起きやすいか
不動産は現金と違って分割がしにくく、評価方法によって金額が変動する資産です。「同居していた長男に自宅を全部相続させる」「収益物件は後継ぎとなる子に集中して継がせる」といった遺言は、事業承継や生活基盤の維持という観点では合理的に見えても、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。
特に、次のようなケースでは遺留分トラブルに発展しやすいと言われています。
- 相続財産のほとんどが自宅不動産や収益物件で、現金化しにくい
- 生前贈与によって特定の相続人にだけ不動産の名義が移転されていた
- 賃貸経営を引き継ぐ相続人に事業用資産(土地・建物)を集中させる遺言内容だった
- 相続開始前10年以内の贈与など、遺留分算定の基礎財産に含まれる贈与が把握されていなかった
遺留分侵害額請求の計算の考え方
遺留分の割合は法定相続分を基準に定められており、直系尊属のみが相続人となる場合は相続財産全体の3分の1、それ以外の組み合わせ(配偶者や子がいる場合など)は2分の1が遺留分全体の割合となります。この割合に、各相続人の法定相続分を掛け合わせて、個々の遺留分の割合を算出します。
計算の基礎となる財産には、相続開始時に残っていた財産だけでなく、一定期間内の生前贈与や特別受益に該当する贈与も加算されます。不動産の評価は時価(実勢価格)を基準に行うのが原則で、固定資産税評価額や路線価をそのまま用いると実態と乖離することがあるため、専門家による鑑定や査定が必要になる場面もあります。評価額をめぐって当事者間の見解が分かれることも多く、これが遺留分トラブルが長期化する一因になっています。
不動産を渡す側が事前にできる対策
将来の遺留分トラブルを避けるために、財産を遺す側があらかじめ講じておける対策はいくつかあります。
- 遺言書の中で、遺留分に配慮した財産配分をあらかじめ検討しておく
- 不動産を承継させる相続人に、他の相続人へ支払う代償金を準備できるよう生命保険を活用する
- 生前に推定相続人と財産分けについて話し合い、認識のずれを減らしておく
- 収益不動産の承継を検討する場合は、事業用資産と生活用資産を分けて整理しておく
- 相続財産に占める不動産の割合が大きい場合は、専門家(税理士・弁護士・不動産会社)に早めに相談する
特に賃貸経営をしているオーナーの場合、事業を継続させる相続人と、それ以外の相続人との間で公平感を保つ工夫が重要になります。代償金の原資を生命保険で用意しておくと、不動産を売却せずに遺留分侵害額請求へ対応できる可能性が高まります。
遺留分侵害額請求を受けた側の対応
遺言によって不動産を相続した側が、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けた場合、まず請求の対象となる財産の範囲や評価額、遺留分算定の基礎となる贈与の有無を確認する必要があります。請求には時効(相続開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年)があるため、権利関係を整理した上で交渉に臨むことが大切です。
金銭での解決が原則となるため、不動産を手放さずに解決するには、まとまった代償金を準備できるかどうかが焦点になります。資金の準備が難しい場合は、支払いの分割について家庭裁判所に期限の許与を求める制度も用意されています。当事者間の協議で解決が難しい場合は、弁護士を介した交渉や調停・訴訟に発展することもあるため、早い段階で専門家に相談し、感情的な対立を避けながら手続きを進めることが望ましいと言えます。
まとめ
遺留分は、遺言によっても奪うことのできない法定相続人の権利であり、不動産が相続財産の中心にある家庭ほど問題が顕在化しやすい制度です。仙台エリアでも自宅や賃貸物件の承継を考える際には、遺留分への配慮を欠かした遺言や生前贈与がトラブルの火種にならないよう、早めに専門家へ相談しながら準備を進めることをおすすめします。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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