特別寄与料制度とは
2019年7月1日に施行された改正民法により、特別寄与料という新しい制度が創設されました(民法1050条)。これは、相続人ではない親族が被相続人(亡くなった方)の療養看護などに貢献した場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる制度です。
制度創設の背景
改正前の民法では、相続において貢献(寄与分)を主張できるのは相続人のみに限られていました。そのため、例えば長男の妻が義父の介護に長年尽くした場合でも、長男の妻自身は相続人でないために一切の財産を受け取れないという不公平が生じていました。息子が先に亡くなっていて代襲相続も発生しないケースでは、長年献身的に介護した義理の娘が全く報われないという問題が社会的に認識されていました。
特別寄与料制度は、このような貢献を法的に認め、相続財産の分配に反映させる仕組みとして導入されました。
誰が請求できるか
特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族(民法725条が定める6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)のうち、相続人以外の者です。
代表的なケースとして以下が挙げられます。
- 長男の妻(義理の娘):長男が先に死亡し、義父・義母の介護を担っていた場合
- 孫(相続人でない):子が全員死亡していてさらに代襲相続も発生しない孫
- 甥・姪:被相続人に子がおらず、兄弟姉妹も先に死亡しているケース
ただし、内縁の配偶者・友人・隣人などは親族に含まれないため、この制度を使うことはできません。
どのような貢献が対象になるか
特別寄与料が認められるのは、「療養看護その他の労務の提供」であって、その貢献によって被相続人の財産の維持または増加があった場合です。
具体的には以下のような行為が該当します。
- 在宅介護(食事・入浴・排泄などの日常的な介護)
- 通院・入退院の付き添い
- 被相続人の事業への従事(家業の手伝い等)
単なる精神的なサポートや一時的な手伝いでは認められにくく、継続的・専従的な寄与が要求されます。また、特別寄与料の請求が認められるには「特別の寄与」であることが必要で、通常の親族としての扶養義務の範囲を超えた貢献が求められます。
特別寄与料の計算方法
特別寄与料の額は、労務の提供に相当する対価として算定されます。具体的には次の計算式が目安です。
特別寄与料の目安 = 日当(介護報酬基準など参照) × 日数 × 裁量的減額割合(0.5〜0.7程度)
ただし、これはあくまで目安であり、当事者間の協議または家庭裁判所の審判によって最終的な額が決まります。また、特別寄与料の総額は相続財産の総額を超えることはできません。
請求の手続き
特別寄与者は、まず相続人に対して直接協議(話し合い)を求めます。協議が成立しない場合や協議自体ができない場合は、家庭裁判所に協議に代わる処分を申し立てることができます。
申立ての期限は相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月以内、かつ相続開始から1年以内です。この期限を過ぎると請求権が消滅してしまうため、注意が必要です。
仙台家庭裁判所(宮城県仙台市青葉区片平1-6-1)に申立書・申立手数料(収入印紙1,200円)・関係書類を提出します。申立書の書式は裁判所のホームページから入手できます。
特別寄与料の税務上の扱い
受け取った特別寄与料は、相続税の課税対象となります(相続税法4条2項)。特別寄与者が取得した特別寄与料は、被相続人から遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税されます。一方、特別寄与料を支払った相続人は、自分の相続税の計算において特別寄与料相当額を相続財産から控除することができます。
このため、特別寄与料を受け取った場合は相続税の申告が必要になる場合がある点に注意が必要です。
不動産相続への影響
特別寄与料は、相続人から金銭で支払われるのが原則です。不動産そのものを受け取れるわけではありません。ただし、遺産分割の段階で相続人間の話し合いの中で特別寄与料相当分を考慮した分割が行われることもあります。
仙台市内の不動産相続では、例えば長男夫婦が同居して義親の介護を担っていたケースで、相続後に他の兄弟から「法定相続分通りに分けたい」という主張が出ると、長男の妻(相続人でない)が特別寄与料を請求するという事態が生じ得ます。こうした紛争を未然に防ぐには、被相続人の存命中に遺言書を作成し、介護貢献者への財産的配慮を明記することが最善の対策です。
まとめ
特別寄与料制度は2019年の民法改正で新設された比較的新しい制度で、相続人でない親族の貢献が法的に守られるようになりました。ただし、請求の期限・要件・計算方法など専門的な知識が必要であり、相続発生後の紛争に発展しやすいテーマでもあります。
仙台市内での不動産相続で介護貢献の問題が絡む場合は、早めに弁護士・司法書士に相談し、適切な手続きを踏むことをお勧めします。また、被相続人の生前に遺言書で対処しておくことが、家族間の争いを避ける最も効果的な方法です。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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