2026年4月、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の改正が施行され、延床面積300㎡以上の非住宅建築物を新築・増築・改築する場合に、省エネ基準への適合が義務化された。住宅用途だけの話だと思っていたオーナーも少なくないが、テナントビルや店舗ビル、事務所ビルなどの非住宅用途こそ今回の改正で直接的な影響を受ける。仙台市内でテナント物件を保有するオーナーは、この法改正の概要と実務上の対応手順をしっかりと把握しておく必要がある。
今回の改正で何が変わったのか
従来の建築物省エネ法では、延床面積2,000㎡以上の非住宅建築物が省エネ基準適合義務の対象であり、300㎡以上2,000㎡未満の建築物は「届出義務」にとどまっていた。今回の改正により、この届出義務のゾーンが適合義務に格上げされた形だ。
具体的には、延床面積300㎡以上の非住宅建築物について、新築・増築・改築の建築確認申請の際に省エネ基準への適合を示す書類の提出が求められる。適合が確認できなければ、建築確認済証が交付されない仕組みとなった。
対象となる省エネ基準は「一次エネルギー消費量基準」と「外皮基準(PAL*)」の2種類だ。建物の断熱性能や設備の効率性が一定水準を満たしているかどうかが審査される。仙台市は国の定める地域区分(地域区分2〜3)に属しており、寒冷地特有の厳しい断熱性能の要求が課される点に注意が必要だ。
なお、既存建築物そのものに対してただちに改修を強制する規定ではないが、300㎡以上の物件でリノベーションや増築を行う際には適合義務が生じるため、将来の改修計画に与える影響は大きい。
仙台のテナントオーナーが取るべき実務対応
1. 自物件の延床面積と改修予定を把握する
まず行うべきは、自分が保有するテナント物件の延床面積の確認だ。登記簿や建築確認済証、建物台帳などで正確な面積を把握しておく。複数棟を保有している場合は、棟ごとに整理しておくとよい。
次に、今後5〜10年の修繕・改修計画を見直す。外壁の大規模修繕、設備の入れ替え、間取りの変更といった工事が「改築」に該当するかどうかの判断は、建築士や行政窓口(仙台市建築指導課など)への確認が必要だ。軽微な修繕は適合義務の対象外となる場合もあるが、判断に迷うケースでは専門家に相談することを推奨する。
2. 省エネ計算の準備と設計者・建築士との連携
300㎡以上の建築物の省エネ基準適合を確認するためには、「省エネ計算」が必要になる。具体的には一次エネルギー消費量の計算ソフト(国土交通省が提供するWebプログラム等)を使い、設計値が基準値以下であることを示す。
この作業は建築士が担うことが一般的であるため、新築・増改築を検討している場合は、省エネ計算の対応経験がある建築士や設計事務所に早期から相談することが重要だ。仙台市内にも省エネ建築に精通した設計事務所は複数存在するため、実績を確認の上、パートナーを選ぶとよい。
また、建築確認申請の審査期間が延びる可能性もある。省エネ適合性判定に要する期間を織り込んだスケジュール管理が求められる。
3. 補助金・支援制度の活用を検討する
省エネ基準への適合に伴い、断熱改修や設備更新のコストが増加する場合がある。こうした費用負担を軽減するために、国や自治体が提供する補助金・支援制度を積極的に活用したい。
代表的なものとして、環境省の「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ加速化支援事業」や経済産業省・国土交通省が連携する各種省エネ改修補助金がある。非住宅向けの補助制度も複数存在しており、対象要件や補助率は年度ごとに変わるため、最新情報を国土交通省・環境省のウェブサイトで定期的に確認することが大切だ。
仙台市独自の補助制度についても、仙台市環境局や建築指導課に問い合わせることで最新の情報が得られる。省エネ改修を行う際は、補助金の申請窓口への事前相談を必ず行い、申請手続きの漏れがないよう注意したい。
テナントへの影響と契約上の留意点
省エネ基準適合のための工事が発生する場合、テナントへの影響を最小限に抑えることも重要な実務課題だ。工事期間中の営業への支障、騒音・振動、仮設工事の費用負担など、テナントとの事前調整が欠かせない。
特に増改築工事が長期化する場合は、賃貸借契約の中断や賃料の調整についてテナントと協議が必要になることもある。こうした事態を避けるためにも、工事計画は余裕を持って立て、テナントへの説明は十分に行うことが重要だ。
また、省エネ性能の高い建物はテナントにとっても光熱費削減につながるメリットがある。リノベーション後の建物の省エネ性能をテナント募集の訴求ポイントとして活用することも、今後の賃貸経営の差別化戦略として有効だ。
省エネ法対応は一時的なコストとして捉えるのではなく、建物の長期的な資産価値向上と空室対策の機会として前向きに取り組むことをおすすめしたい。
法改正対応や物件の管理・運用に関してお困りの点があれば、エムアセッツのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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