両手取引と片手取引——何が違うのか
不動産を売買するとき、仲介業者が入って取引が成立します。このとき、1社の不動産会社が売主と買主の双方を仲介することを「両手取引」、売主側と買主側それぞれに別の会社が入ることを「片手取引」と呼びます。
言葉だけ聞くとシンプルですが、仲介手数料の受け取り方が大きく異なり、場合によっては売主や買主の利益に影響することもあります。取引の仕組みを正しく理解しておくことは、損をしないための第一歩です。
仲介手数料の流れを図解で理解する
まず、仲介手数料の上限について確認しましょう。売買価格400万円超の場合、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円(税別)」が片側あたりの上限です(宅地建物取引業法第46条・告示)。
片手取引のケース
売主側に不動産会社A、買主側に不動産会社Bが入る場合、A社は売主から、B社は買主からそれぞれ手数料を受け取ります。1社あたりの収入は売買価格の3%+6万円(税別)が上限です。
両手取引のケース
1社が売主・買主の両方を仲介する場合、その1社が売主から3%+6万円、買主からも3%+6万円の計2倍の手数料を得ます。たとえば3,000万円の物件なら、片手だと最大96万円(税別)、両手だと最大192万円(税別)の収入になります。
両手取引が問題になりやすい理由
両手取引そのものは宅建業法上適法です。しかし、構造上の利益相反が生じやすい点に注意が必要です。
不動産会社は売主と買主の双方の代理人となるため、本来は相反する利益(「なるべく高く売りたい売主」と「なるべく安く買いたい買主」)を同時に調整することになります。公正中立な立場を保つことが求められていますが、手数料を2倍得られる両手取引に誘導するような行動をとる業者が存在するのも現実です。
たとえば「囲い込み」と呼ばれる問題があります。売主から専任媒介または専属専任媒介を受けた不動産会社が、レインズ(指定流通機構)に登録した物件情報を他社に紹介させないよう意図的にブロックし、自社の買主候補だけに売ろうとする行為です。これにより、より良い条件の買主が現れるチャンスを失う売主が損をする可能性があります。
買主が両手取引に注意すべきポイント
買主の立場からみると、自分を担当する不動産会社が売主側の仲介も兼ねている場合、純粋に自分の利益を代弁してもらいにくい構造が生まれます。具体的には以下の点に注意してください。
- 値引き交渉の代理が弱くなる可能性:成約価格が低いと両手でも手数料総額が減るため、積極的な値引き交渉を行わないケースがある
- 物件の欠陥情報の伝え方が曖昧になりやすい:売主側に不利な情報を積極的に買主に伝えるインセンティブが弱い
- 急かされる感覚:両手成約を急いで成立させたいため、「今すぐ申込みを」というプレッシャーをかけられることも
ただし、すべての両手取引業者が不誠実なわけではありません。丁寧で誠実な対応をする業者も多く存在します。大切なのは仕組みを知ったうえで、担当者の言動を自分で判断できる状態にしておくことです。
売主が知っておくべき対策
売主として両手取引リスクを減らすには、以下の対策が有効です。
1. レインズ登録状況を確認する
専任媒介・専属専任媒介契約では、不動産会社はレインズへの登録義務(専任媒介は7日以内、専属専任は5日以内)があります。登録後は売主自身がレインズのIDで登録内容を確認できます。登録が遅れている、または「公開中」になっていない場合は囲い込みの可能性を疑ってください。
2. 定期報告を求める
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上の報告義務が課されています。報告内容(問い合わせ件数・内見数など)が具体的でない場合は担当者に詳細を求めましょう。
3. 一般媒介で複数社に依頼する選択肢
囲い込みを根本的に防ぐには、複数社に同時依頼できる一般媒介契約を選ぶ方法もあります。ただし、1社が力を入れにくくなるデメリットもあるため、エリアの競争状況や物件の特性に応じて判断が必要です。
仲介会社に質問してみよう
買主として動いている方は、担当の不動産会社に「この物件を売主側でも仲介していますか?」と率直に聞いてみましょう。両手かどうかを開示する義務はありませんが、誠実な会社であれば正直に答えてくれます。回答が曖昧だったり、質問を嫌がるような姿勢を示したりする場合は、担当者の変更や会社の変更も検討してみてください。
不動産取引は人生で何度もない大きな決断です。仕組みを理解したうえで、信頼できるパートナーを選ぶことが、後悔のない取引につながります。エムアセッツでは、お客様の立場に立ったご相談を承っておりますので、取引の疑問点はいつでもお気軽にお問い合わせください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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