法人名義で不動産を購入するとはどういうことか
不動産の購入者(名義人)を「個人」ではなく「法人(会社)」にするケースだ。すでに合同会社・株式会社を持っているオーナーが事業拡大のために物件を取得したり、不動産投資を目的に新たに法人を設立したりするケースが多い。
仙台でも賃貸経営を本格化させる個人投資家が「法人化」を検討するタイミングで、最初の一棟を法人名義で購入することが増えている。
法人購入のメリット
税率の差を活用した節税
個人所得税の最高税率は45%(住民税を合わせると55%)だが、中小法人の実効税率は概ね23〜35%程度に収まる(資本金規模・所得水準による)。不動産所得が年間数百万円規模になると、法人課税の方が税負担を抑えられるケースが多い。
経費計上の幅が広がる
法人では事業に関連する多様な費用が経費計上できる。個人では難しかった社宅費用・役員報酬・社会保険料の損金算入などが可能になり、可処分所得を最大化しやすい。
減価償却の活用
法人では建物の減価償却費を費用として計上できる。特に中古物件は耐用年数が短縮され、早期に多額の償却費を計上して帳簿上の赤字を作り、税負担を繰り延べる節税手法が活用しやすい。
損益通算の範囲拡大
法人内であれば複数の物件・事業の損益を合算して計算できる。個人の場合は「不動産所得の赤字」を他の所得から差し引けるのに一定の制限があるが、法人では事業所得内での通算がしやすい。
相続対策への活用
法人株式として財産を保有することで、不動産そのものを相続する場合に比べて評価額を低下させる効果が期待できる。配偶者や子への株式の分散も相続対策として機能する(ただし税制改正の動向に注意)。
法人購入のデメリット
住宅ローンが使えない
法人名義で購入する場合、住宅ローン(低金利・長期)は原則として利用できない。法人向けの不動産担保融資(事業用ローン)となるため、金利は高く(1.5〜3.5%程度)、融資審査も厳しくなる傾向がある。
設立・維持コストがかかる
法人を設立するには登録免許税・定款作成費用・司法書士報酬などで合計15〜20万円程度かかる。維持コストとして税理士費用(年間30〜60万円程度)・社会保険料・法人住民税(均等割:最低7万円)が毎年発生する。物件数が少ない初期段階では費用倒れになることもある。
不動産取得税・登録免許税は個人と同様
不動産取得税・登録免許税は法人名義であっても税率は個人とほぼ同じだ。購入時の諸費用は変わらないため、取得コストの節約にはならない。
個人への出金に税金がかかる
法人の利益を個人が受け取る場合、役員報酬・配当など課税対象の手続きが必要になる。法人内に内部留保が積み上がっても自由に引き出せない点は個人所有との大きな違いだ。
法人購入の手続きフロー
ステップ1:法人設立(既存法人の場合はスキップ)
投資目的の法人を設立する場合は、株式会社または合同会社を設立する。合同会社は設立費用が低く(約6万円〜)・手続きが簡易なため、不動産投資用に選ばれることが多い。
ステップ2:法人での金融機関審査・融資契約
法人名義での不動産ローン審査を行う。審査では法人の決算書・事業計画・代表者の信用情報が確認される。新設法人は設立間もない実績不足により融資を受けにくい場合があり、代表者の個人保証が求められることが多い。
ステップ3:売買契約の締結
法人が買主として売買契約を締結する。契約書に法人名・代表者名・法人印を押印する。重要事項説明は法人代表者が受ける形になる。
ステップ4:登記(所有権移転登記)
司法書士が法務局へ所有権移転登記を申請する。登記事項証明書の「所有者」欄に法人名が記載される。登録免許税は固定資産税評価額の2%(売買による移転の場合)が原則だ。
ステップ5:法人確定申告・不動産取得税の手続き
法人名義での取得後は、毎年の法人税申告(減価償却・不動産所得の計上等)が必要になる。不動産取得税の申告・軽減申請も忘れずに行う。
個人→法人への移転(法人化)との違い
すでに個人名義で物件を保有している人が「法人化」する場合、法人へ物件を売却する形になるため、売却益(譲渡所得)に個人の税金がかかる可能性がある。新規取得を最初から法人で行う場合とは税務上の処理が異なるため、既存物件を法人に移す場合は税理士への相談が必須だ。
まとめ
仙台で不動産を法人名義で購入することは、規模拡大・節税・相続対策において有効な選択肢になりえる。一方で住宅ローンが使えない・設立・維持コストがかかる・個人への出金に課税が生じるなどのデメリットもある。判断の目安として「年間の不動産所得が500万円を超えてきたタイミングで法人化を検討する」という実務上の目安があるが、個々の状況によって最適解は異なる。不動産会社・税理士・司法書士と連携しながら計画的に進めることをお勧めする。エムアセッツ株式会社では法人名義での不動産購入相談にも対応しているので、ぜひご相談ください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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