個人から法人への不動産移転が注目される理由
仙台市内で複数の賃貸物件を保有し、不動産所得が増えてくると「個人から法人に移したほうが税金が安くなるのでは」と考えるオーナーが増えています。個人の所得税は最高税率45%(住民税含め55%)に達するのに対し、法人税は実効税率で25〜33%程度のため、所得規模によっては大幅な節税効果が見込めます。
しかし、個人所有の不動産を法人に移転するには費用とリスクも伴います。この記事では、仙台での不動産投資を念頭に置きながら、法人移転のスキームと注意点を解説します。
法人移転の主な3つのスキーム
スキーム1:法人への売却(有償譲渡)
個人から法人に対して、不動産を時価で売却する方法です。売買契約を締結し、法人が代金を支払います。
メリット
- 移転後は法人の資産として経費処理が可能
- 売却益を個人の退職金として計上できるケースがある
デメリット
売却価格は時価(不動産鑑定評価または固定資産税評価額の倍率計算など)で行う必要があります。時価より著しく低い価格での売却(低額譲渡)は、贈与と見なされ、税務上の問題が生じます。
スキーム2:現物出資
個人が法人の設立時または増資時に、現金ではなく不動産を出資する方法です。不動産の時価が法人の資本金に算入されます。
メリット
- 法人に現金がなくても移転できる
- 設立時なら比較的シンプルな手続きで対応できる
デメリット
- 現物出資検査が必要(弁護士・公認会計士等による証明)
- 時価との差額が個人に譲渡所得として発生する
- 登録免許税・不動産取得税が発生する
スキーム3:法人への賃貸(賃料を法人に集約する方式)
不動産の名義は個人のまま維持し、個人が法人に対してサブリース契約で建物や賃貸権を転貸する形式をとります。物件の法的な所有権は移転しませんが、賃料収入を法人に集約することで一部の節税効果が得られます。
メリット
- 不動産取得税・登録免許税が不要
- 移転コストが最も低い
デメリット
- 土地・建物の名義は個人のままなので相続税対策の効果は限定的
- 「法人」と「個人」の取引が複雑になり税務調査で指摘されるリスクがある
- 賃料の設定が不適切だと問題になる
法人移転の手続きの流れ(売却スキームの場合)
仙台での不動産売却スキームでの法人移転は、概ね以下のステップで進みます。
ステップ1:不動産鑑定評価または価格査定の実施
売買価格の根拠を明確にするため、不動産鑑定士による鑑定評価書の取得が推奨されます(費用目安:20〜50万円)。簡易的な査定でも代用できる場合がありますが、税務上の安全性の観点から正式な鑑定評価が望ましいです。
ステップ2:法人の設立または既存法人の確認
不動産管理会社・不動産保有法人として機能させる法人(合同会社または株式会社)が必要です。新規設立の場合、設立費用として合同会社なら6〜10万円、株式会社なら20〜30万円程度かかります。
法人の定款に「不動産の賃貸・管理・売買」に関する事業目的を記載することが重要です。
ステップ3:売買契約の締結
個人(売主)と法人(買主)の間で不動産売買契約を締結します。法人の代表者が個人でもある場合は、利益相反取引に該当するため、法人の社員総会や取締役会での承認決議が必要です。
ステップ4:決済・登記申請
売買代金の決済と所有権移転登記を行います。売買を証明する書類・法人の登記事項証明書等が必要です。
登録免許税は「固定資産税評価額 × 2%」(土地)または「固定資産税評価額 × 2%」(建物)が標準です。
ステップ5:税務申告
個人は翌年の確定申告で「不動産の譲渡所得」を申告します。保有期間が5年超の場合は長期譲渡所得として税率20.315%、5年以下の場合は短期譲渡所得として39.63%の税率が適用されます(2026年時点)。
税務上の注意点
低額譲渡の問題
個人から「同族法人」への低額譲渡(時価の2分の1未満での売却)は、時価で譲渡したものとみなされる「みなし譲渡課税」が適用されます(所得税法59条)。税務調査で否認されるリスクを避けるため、適正価格での売買が大前提です。
不動産取得税と登録免許税
法人が不動産を取得すると、不動産取得税と登録免許税が発生します。仙台市内の物件の場合、これらのコストが移転のネックになることがあります。特に多棟・多戸を一気に移転するとコストが膨らむため、段階的な移転を検討するケースもあります。
住宅ローンの引き継ぎ問題
個人名義の住宅ローン(融資)がついている物件を法人に移転する場合、金融機関との交渉が必要です。多くの場合、個人ローンは法人では引き継げず、一旦完済するか法人向けに借り換えが必要です。
どのタイミングで法人化を検討すべきか
個人の不動産所得(年間家賃収入から経費を引いた額)が大まかに以下の水準を超えてきたとき、法人化のメリットが出やすいと言われています。
- 課税所得ベースで年800万〜1,000万円超
- 物件の保有件数が増え、相続対策も視野に入ってきた
- 専業大家として本格的に不動産業を展開したい
ただし、法人化のコスト・効果は個人の状況(家族構成・他の収入・物件の種類・ローン残高など)によって大きく異なります。税理士・不動産コンサルタントとの相談を通じて、個別の試算を行うことが不可欠です。
まとめ
個人名義の不動産を法人に移転するスキームには売却・現物出資・サブリース方式の3種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。移転コスト(不動産取得税・登録免許税・ローン返済)と節税効果を正確に比較し、長期的な資産管理の視点で判断することが重要です。
仙台での不動産投資の法人化についてお悩みの方は、エムアセッツ株式会社の専門スタッフにお気軽にご相談ください。税理士との連携による試算サポートも対応しています。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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