送電線の下の土地には「見えない制限」がある
仙台市内でも、宮城野区・若林区の郊外部や泉区・太白区の丘陵地帯など、高圧線や送電線の真下・近傍に位置する土地は珍しくありません。見た目は普通の更地や畑でも、登記簿を取り寄せると電力会社の「地役権」や「区分地上権」が設定されていて、建物の高さや用途に制約が課されているケースがあります。
こうした権利制限は目視ではわからないため、相続した土地や購入を検討している土地が送電線の下を通る場合には、登記内容の確認が欠かせません。権利関係を見落としたまま建築計画を進めると、着工前の段階で計画を根本から見直さなければならない事態になりかねないのです。
地役権と区分地上権——何が違うのか
送電線を安全に維持・管理するため、電力会社は電線が上空を通過する土地について、土地所有者との契約にもとづいて一定の利用制限を設けます。その法的な手段として使われる主なものが、地役権と区分地上権の2つです。
- 地役権:電力会社(要役地の便益を受ける側)のために、送電線下の土地(承役地)に建築制限などの義務を課す権利。土地の所有権そのものは変わらず、地役権料(補償金)を受け取りながら土地を保有し続けるかたちが一般的です。
- 区分地上権:地表から一定の高さの「空間の層」だけを電力会社が使用する権利。地上の一定高度から上は電力会社の使用空間となりますが、地表面や地下は引き続き所有者が利用できます。
どちらの権利も、土地の全部事項証明書(いわゆる登記簿謄本)に記載されます。地役権は「権利部 乙区」に記録され、承役地となる土地の範囲や制限内容の概要が確認できます。また、過去に電力会社から「承諾料」や「補償金」を一時金として受け取った土地では、その際に締結した契約書に建築制限の詳細条件が定められていることが多く、書類が残っているかどうかも合わせて確認しておくことが重要です。
具体的にどんな建築制限がかかるか
制限の内容は電線の電圧区分や、権利設定時に電力会社と取り交わした個別の契約によって異なります。一般的によく見られる制限の例を以下に挙げます。
- 建築物の高さを一定値(電線との離隔距離を確保できる高さ)以下に制限する
- 引火性・爆発性のある物品の保管・取り扱いの禁止
- 高さのある工作物(アンテナ、大型看板、クレーン常設設備など)の設置制限
- 電線に接近するおそれのある樹木の植栽・伐採に関する条件
- 場合によっては建物の建築そのものを禁ずる条項
「送電線の下だから絶対に建物を建てられない」という固定観念は必ずしも正確ではありません。電圧が比較的低い配電線の場合、一定の高さ制限の範囲内であれば建築可能なケースも少なくありません。一方で、鉄塔が立ち並ぶ特別高圧の送電線では制約が厳しく、建築そのものが困難なこともあります。登記簿の記載と合わせて、東北電力ネットワーク株式会社など該当の送配電事業者に照会し、実際の契約内容を確認することが重要です。
購入・相続・売却の場面で押さえるべきポイント
送電線下の土地に関わる場面ごとに、確認しておくべき事項は異なります。
購入するとき
- 土地の全部事項証明書(登記簿謄本)の乙区を確認し、地役権・区分地上権の有無と概要を把握する
- 宅地建物取引業者が作成する重要事項説明書で、土地の権利制限が適切に告知されているか確認する
- 必要に応じて送配電事業者に照会し、建築可能な高さや用途制限の詳細を確かめる
相続するとき
- 地役権・区分地上権は土地に付随する権利のため、相続によって所有権とともに承継される
- 被相続人が過去に電力会社と交わした契約書や受領した補償金の記録を相続財産の一部として確認する
- 制限の内容によっては土地の評価額に影響が出るため、相続税申告に際して適切な評価が必要になることがある
売却するとき
- 売主は地役権の内容を正確に把握し、買主への説明責任を果たす義務がある
- 建築制限の内容によっては土地の市場価値に影響するため、査定の段階から制限内容を開示して進めることが望ましい
制限があっても土地を活かす方法
建築に制約があるからといって、土地が完全に「使えない」わけではありません。高さ制限や建築禁止の条件がある場合でも、以下のような活用方法が現実的な選択肢になります。
- 駐車場(月極・コインパーキング):地表面の舗装やフラップ板の設置程度であれば、多くの場合制限に抵触しません。交通量の多い幹線道路沿いの土地では収益性も見込めます。
- 資材置き場・コンテナ型トランクルーム:建築確認申請を要しない簡易な構造物であれば設置できるケースがあります。ただし設置高さと地役権契約の条項は事前に確認が必要です。
- 貸農園・市民農園:郊外部の土地では農業的利用が馴染みやすく、管理の手間も比較的軽いため現実的な選択肢になります。
- 太陽光発電(ソーラーパネル設置):架台の高さが制限内に収まる場合は可能なことがあります。ただし地役権契約に工作物設置への言及があるケースもあるため、送配電事業者への事前確認は必須です。
いずれの活用を検討する場合でも、地役権の契約内容と都市計画法・建築基準法上の用途地域規制の両方を確認したうえで計画を立てることが大前提です。
判断に迷ったら早めに専門家へ相談を
送電線下の土地は、権利制限の有無・内容によって評価額と活用の方向性が大きく変わります。登記簿の乙区を見ただけでは制限の全容はわからないことが多く、「相続した土地に地役権の記載がある」「購入を検討している土地の上空を電線が通っている」といった場合は、権利の解釈だけでなく実際の建築可否の確認を含めて、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。登記・権利関係については司法書士や土地家屋調査士、土地活用の具体的な検討は不動産会社が相談窓口になります。
仙台市内の土地について、権利制限や活用の方向性でご不明な点があれば、エムアセッツのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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