賃貸物件の「音」のトラブルのなかでも、上下階の間で起きる足音や物音は最も多い相談のひとつです。こうした音の伝わりにくさを左右するのが、床まわりの遮音性能と、それを高めるための「遮音床システム」と呼ばれる仕組みです。本ガイドは、特定の製品やブランドの優劣を比較するものではなく、床衝撃音の種類・遮音等級の読み方・遮音床システムの一般的な考え方といった「制度と仕組みの基礎」を整理し、賃貸を選ぶ際の見方を身につけていただくことを目的としています。数値は物件や製品によって大きく異なるため、本稿では一般論にとどめ、最終的な判断は内見と管理会社への確認で行うことを前提にしてください。
床衝撃音とは(LH/LLの2種類)
床を通じて下の階へ伝わる音を「床衝撃音」と呼び、大きく2種類に分けて考えるのが一般的です。ひとつは重量床衝撃音(LH)、もうひとつは軽量床衝撃音(LL)です。両者は音の性質も対策の難しさも異なるため、まず区別して理解しておくと、物件の説明や図面の読み方がぐっと分かりやすくなります。
| 種類 | 略号 | 音の例・発生源 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 重量床衝撃音 | LH | 子供が飛び跳ねる音、走り回る音、家具を引きずる音 | 低く重い「ドスン」という音。床や建物の構造そのものが影響しやすい |
| 軽量床衝撃音 | LL | スプーンや硬貨を落とす音、スリッパの足音、軽い物の落下音 | 高く軽い「コツン」という音。床仕上げ材やカーペット等で和らげやすい |
一般に、重量床衝撃音(LH)は建物の構造に左右されやすく、後から床材だけで大きく改善するのは難しい傾向があります。一方、軽量床衝撃音(LL)はカーペットや緩衝材など床の表面に近い対策が比較的効きやすいとされます。この「重い音は構造、軽い音は仕上げ」という大まかな対応関係を押さえておくと、内見時に何を確認すべきかの見当がつけやすくなります。
遮音等級の読み方
床の遮音性能は、等級という形で表現されることがあります。ここで混同しやすいのが「数値の向き」です。代表的なL値の表記では、数値が小さいほど遮音性が高い(音が伝わりにくい)という方向で読みます。日常的な数字の感覚と逆になるため、注意が必要です。
| 表記 | 意味の方向性 | 読み方の注意点 |
|---|---|---|
| L値(遮音等級) | 数値が小さいほど遮音性が高いとされる | 「数字が大きいほど良い」と誤解しやすい。向きを必ず確認する |
| ΔL等級 | JIS改正で用いられるようになった、床材そのものの衝撃音低減性能を表す等級 | L値とは別の指標で読み方も異なる。同じ土俵で単純比較しない |
近年はJISの改正により、床材の低減性能を示すΔL等級という表記も使われるようになっています。これはL値とは性格の異なる指標であり、表記の意味を取り違えると評価を誤ります。広告や資料に等級が記載されていても、それが何を測った数値で、どちらの向きが高性能なのかを必ず確認することが大切です。等級は目安として有用ですが、実際の体感は建物全体の構造や生活時間帯にも左右されるため、数字だけを過信しないようにしましょう。
遮音床システムの一般的な仕組み
「遮音床システム」とは、床を通じて伝わる衝撃音を抑えるために、床の構造や材料を工夫した仕組みの総称です。特定の一製品を指す言葉ではなく、いくつかの考え方のカテゴリとして整理すると理解しやすくなります。
| 仕組みのカテゴリ | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 二重床 | 床スラブの上に支持脚などで空間を設け、床仕上げを浮かせる構造。配線・配管の自由度や遮音への配慮がしやすいとされる |
| 乾式遮音床 | 緩衝材や遮音材を組み合わせ、湿式工法に頼らず層で音を伝わりにくくする考え方 |
| 緩衝材・防振ゴム | 床と構造体の間に弾力のある材料をはさみ、衝撃の伝わりを和らげる発想 |
重量鉄骨造のマンションなどでは、こうした高遮音床システムが採用されることがあり、「シャイド55」といった製品名が高遮音床システムの一例として挙げられる場合もあります。ただし、製品ごとの具体的な遮音等級や採用メーカーは物件によって異なり、確証のない数値を一律に当てはめることはできません。本稿でも個別の数値は示さず、あくまで「こうした仕組みのカテゴリがある」という理解にとどめてください。実際の性能は、必ず物件ごとの資料や管理会社への確認で把握することが重要です。
賃貸で遮音性を確認する方法
カタログの等級だけでは、実際の住み心地は分かりません。賃貸を選ぶ際は、内見や問い合わせを通じて、自分の生活スタイルに合うかを定性的に確かめることが現実的です。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 建物の構造種別 | 木造・軽量鉄骨・重量鉄骨・RCなどの別を資料で確認し、構造の傾向を把握する |
| 上下階の生活音 | 内見時に静かにして、上階の足音や生活音が聞こえるか耳を澄ます |
| 床の仕様 | 二重床か、緩衝材やカーペットが使われているかなど、床まわりの仕様を質問する |
| 周辺の生活パターン | 上階に小さな子供がいるか、生活時間帯が合うかなどを管理会社に確認する |
| 過去の音トラブル | 騒音に関する相談履歴や対応状況を、可能な範囲で管理会社に尋ねる |
内見では、できれば時間帯を変えて複数回訪れ、昼と夜の生活音の違いを確かめられると理想的です。難しい場合でも、室内で一度静かに立ち止まり、上階や隣室の音がどの程度伝わるかを意識してみてください。あわせて、自分自身が出す音への配慮も住み心地を左右します。フローリングにラグやカーペットを敷く、椅子の脚にカバーを付けるといった工夫は、軽量床衝撃音をやわらげるうえで有効とされます。
まとめ
賃貸の遮音性を考えるうえでは、床衝撃音にLH(重量)とLL(軽量)の2種類があること、L値は数値が小さいほど高遮音という向きで読むこと、そして「遮音床システム」は二重床や緩衝材などの仕組みの総称であることを押さえておくと、資料や広告の表現に惑わされにくくなります。等級や製品名はあくまで目安であり、具体的な数値は物件ごとに異なります。気になる物件があれば、構造種別や床の仕様、過去の音トラブルの有無などを整理したうえで、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。仙台での物件選びにあたり、生活スタイルに合った遮音性の見方を一緒に確認させていただきます。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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