定期借家契約とは何か
賃貸物件には大きく分けて「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類がある。一般的な賃貸物件の多くは普通借家契約だが、近年は定期借家契約で募集する物件も増えている。
普通借家契約は、借地借家法の保護が手厚く、貸主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要だ。正当事由は非常に厳格に判断されるため、事実上、借主が望む限り住み続けられることが多い。
定期借家契約は、2000年の借地借家法改正で導入された契約形態で、契約期間が満了すれば賃貸借関係が終了する。貸主側の正当事由は不要で、期間満了とともに更新なく退去が求められる。
入居者にとって最大のリスクは、「気に入った物件に長く住みたい」と思っていても、契約期間終了時に立ち退きを求められる可能性があることだ。
定期借家契約の成立要件
定期借家契約が有効に成立するには、借地借家法38条が定める厳格な要件を満たす必要がある。
1. 書面による契約:口頭では不可。必ず書面(または電磁的記録)による契約が必要だ。
2. 更新がない旨の書面による説明:貸主または宅地建物取引業者は、契約前に借主に対して「この契約は更新がなく、期間満了により終了する」旨を書面を交付して説明しなければならない。この説明義務を怠った場合、定期借家契約としての効力が否定され、普通借家契約になってしまう(借主にとって有利)。
3. 1年未満の場合の注意:1年未満の定期借家契約は、通常の賃貸でも利用されるが、1年以上の場合には「終了の通知」義務が発生する(後述)。
入居者が知るべき3つのリスク
リスク1:期間満了による退去義務
定期借家契約は期間が満了すれば原則として終了する。貸主が「再契約しない」と決めれば、借主はその物件を離れなければならない。仙台市内で気に入ったエリア・物件に長く住みたい場合は、定期借家物件を選ぶ際に慎重に判断すべきだ。
リスク2:期間満了の通知タイミング
1年以上の定期借家契約では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主に対して「期間満了により賃貸借が終了する旨の通知」をしなければならない(借地借家法38条4項)。この通知がなければ、貸主は期間満了を理由に退去を求めることができない。ただし、通知が遅れた場合でも、通知から6か月が経過すれば終了を主張できる。
リスク3:再契約が保証されていない
定期借家契約の期間満了後に「再契約」という形で住み続けるケースもあるが、これはあくまで貸主・借主の合意による新たな契約だ。貸主が再契約を断れば、借主に対抗手段はない。賃料改定のタイミングにも使われることがある点に注意が必要だ。
入居前に確認すべきポイント
契約期間の長さを確認する
定期借家契約の期間は物件によって異なり、2年・3年・5年など様々だ。自分の居住計画と照らし合わせて、期間が合っているかを確認しよう。
再契約の実績・方針を確認する
「再契約は可能ですか?」と事前に確認しておくことが重要だ。「原則として再契約する」「条件次第」「更地にして売却予定のため不可」といった回答によって、物件選びの判断が変わる。書面で「再契約可能」という確認が取れれば、安心感が高まる。
賃料が相場より低い理由を確認する
定期借家物件は、更新拒絶リスクを負う借主に対するメリットとして、相場より賃料が低い場合がある。価格だけで決めるのではなく、なぜ定期借家なのかの理由(建て替え予定・相続物件の一時貸しなど)を確認しよう。
中途解約はできるのか
定期借家契約の中途解約については、民法および借地借家法の規定が適用される。
居住用かつ200平米未満の物件については、借地借家法38条7項が適用される。借主に「やむを得ない事情」(転勤・療養・親族の介護など)がある場合、申し出から1か月後に契約を解約できる(貸主の承諾は不要)。
一方、店舗・事務所など事業用の定期借家や、200平米以上の住居では、上記の特例は適用されない。契約書に中途解約条項がない場合、原則として期間満了まで賃料を支払い続ける義務が生じる。
入居前に「中途解約の可否と条件」を契約書で確認しておくことが不可欠だ。
期間満了後の対応策
定期借家の期間が満了し、退去を求められた場合でも、以下のような対応が考えられる。
1. 再契約の交渉:貸主と誠実に再契約の交渉を行う。引き続き良好な関係を維持し、賃料改定などの条件を柔軟に協議することで、再契約が成立するケースも多い。
2. 定期借家の説明義務違反を主張する:契約前に「更新がない旨の書面による説明」がなかった場合、定期借家としての効力が否定される(普通借家として扱われる)。契約の経緯を振り返り、説明義務が果たされていたかを確認しよう。
3. 新たな物件探し:やむを得ず退去となる場合、余裕をもって物件探しを始めることが大切だ。定期借家の期間満了が近づいたら、早めに次の物件を検討しよう。
まとめ
定期借家契約は、貸主にとって使い勝手がよい一方、入居者には更新がないリスクが伴う。仙台の賃貸市場でも定期借家物件は一定数存在しており、賃料の安さに惹かれて入居した後に期間満了での退去を余儀なくされるケースもある。契約前に内容をよく理解し、再契約の方針や中途解約の条件を確認することが、安心して暮らすための第一歩だ。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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