親から土地・建物を相続する際、あるいは不動産の売却を進める段階で「建物が登記されていない」と判明するケースがあります。日本には登記されていない建物(未登記建物)が一定数存在しており、相続手続きや売買では大きな障害になることがあります。
この記事では、未登記建物が発覚した場合の対処法と、建物表示登記の手順を解説します。
未登記建物とはどういう状態か
不動産登記には「土地」と「建物」の2種類があります。土地は農地転用や分筆などを除き基本的に登記されています。しかし建物については、建築後に登記を怠ったり、増改築部分だけ未登記のままになっているケースが存在します。
未登記建物が生まれる主な原因
- 高度経済成長期に建てられた建物の一部は登記手続きが行われなかった
- 農村部での自主建設(セルフビルド)建物
- 増改築した部分(増築部分だけ未登記)
- 離れ・物置・車庫などの付属建物
仙台市内でも、昭和40〜50年代に建てられた一戸建ての中には増築部分が未登記のまま相続されているケースがあります。
未登記建物を放置するリスク
未登記建物を放置し続けると、以下のような問題が生じます。
売却・担保設定ができない
住宅ローンを利用した不動産購入では、金融機関が建物に抵当権を設定します。未登記建物には抵当権が設定できないため、買主が住宅ローンを利用できず売買が成立しない場合があります。
相続登記が完結しない
2024年4月から相続登記が義務化されました(期限:相続を知った日から3年以内)。しかし建物が未登記の場合、まず建物表示登記を完了させてから相続登記(所有権移転登記)に進む必要があります。
固定資産税の過徴収・不徴収問題
固定資産税は市区町村が現地調査を基に課税するため、未登記建物でも実際に建物があれば課税されています。ただし、増改築部分が未登記の場合、増築後の評価額に基づいた課税が正確に行われていない場合もあります。逆に、取り壊した建物の登記抹消を忘れると、存在しない建物に税金を払い続けることになります。
2026年以降の過料リスク
不動産登記法改正(2024年施行)により、相続が判明してから3年以内に相続登記を行わないと10万円以下の過料の対象となります。未登記建物の場合はそもそも相続登記の前提が整わないため、早期対応が必要です。
建物表示登記の手順
未登記建物を登記するためには、まず建物表示登記(建物の登記)を行います。これは建物の物理的な情報(所在・種類・構造・床面積)を登記簿に記録する手続きで、土地家屋調査士が実施します。
ステップ1:土地家屋調査士への依頼
建物表示登記は土地家屋調査士の専門業務です。仙台市内の土地家屋調査士に依頼します。費用の目安は一般的な住宅で8〜15万円程度ですが、図面の有無・建物の複雑さによって変わります。
ステップ2:必要書類の準備
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 建物の設計図・建築確認済証 | 施主保管 or 自治体の建築指導課 |
| 固定資産税の課税明細書 | 市区町村から毎年送付されるもの |
| 住宅地図・公図 | 法務局 |
| 相続の場合:戸籍・遺産分割協議書 | 各市区町村 |
設計図や建築確認済証が紛失している場合、土地家屋調査士が現地測量を実施して図面を作成します。
ステップ3:現地調査・測量
土地家屋調査士が現地を訪れ、建物の形状・面積・構造(木造・鉄骨等)・種類(居宅・車庫等)を測量・確認します。
ステップ4:法務局への申請
必要書類と測量図面を添えて法務局(仙台の場合は仙台地方法務局)に申請します。通常2〜4週間程度で登記が完了します。登録免許税は建物表示登記の場合は非課税です。
建物保存登記(所有権保存登記)も必要
建物表示登記が完了すると「建物の存在」は登記簿に記録されますが、誰が所有者かはまだ記録されていません。この「所有者の登記」を建物保存登記(所有権保存登記)と言い、表示登記に続けて行います。
保存登記は司法書士が担当します。費用は登録免許税(固定資産税評価額の0.4%、新築住宅は特例で0.15%)と司法書士報酬(3〜8万円程度)がかかります。
相続の場合は保存登記に続けて相続による所有権移転登記も行います。
増築部分だけ未登記の場合
建物全体は登記されているが、増築した部分だけ未登記のケースもよく見られます。この場合は建物変更登記(床面積の変更)が必要です。
増築部分が大きい場合は固定資産税の評価額が変わる可能性もあります。売買や相続の際に増築未登記が発覚すると、登記面積と実際の床面積が一致せず取引が停止するリスクがあります。
取り壊した建物の登記抹消も忘れずに
建物を取り壊した場合は建物滅失登記(たてものめっしつとうき)を行います。取り壊してから1ヶ月以内に申請することが法律上求められています(不動産登記法57条)。
滅失登記を怠ると、存在しない建物の固定資産税を支払い続けることになります。また、土地を売却する際に「建物が登記上存在する」状態では手続きが複雑になります。
まとめ
未登記建物は放置するほど問題が複雑になります。相続・売却・担保設定を検討しているなら、まず土地家屋調査士に現状確認を依頼するところから始めましょう。仙台市内の不動産では特に昭和期に建てられた物件に未登記・増築未登記が多く、早期発見・対処が重要です。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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