損益通算とは何か——給与所得者オーナーが知るべき基本
「損益通算」とは、ある所得区分で生じた損失(赤字)を、別の所得区分の黒字と合算して税金を計算する仕組みです。賃貸オーナーにとって重要なのは、不動産所得の赤字が給与所得と通算できるという点です。
たとえば、会社員として500万円の給与所得がある方が、賃貸経営で年間80万円の不動産所得の赤字を出した場合、給与所得と合算した課税所得は500万円から80万円を差し引いた420万円になります。これにより所得税・住民税が軽減される効果があります。
ただし、この損益通算が使えるのには前提条件があります。不動産所得の「赤字」が真の経営コストに基づくものである必要があります。次のセクションで説明する「減価償却費の計上」と組み合わせることで、この仕組みが最もよく機能します。
減価償却費が「帳簿上の赤字」を作る仕組み
賃貸物件の建物部分は、時間の経過とともに価値が下がるという概念に基づき、毎年「減価償却費」として経費計上することができます。土地部分は減価償却の対象になりませんが、建物部分(木造・軽量鉄骨・重量鉄骨・RCなど構造によって耐用年数が異なる)は定められた耐用年数にわたって毎年一定額を経費として計上できます。
ここで重要なのは、減価償却費は「実際にお金が出ていかないのに経費になる」という点です。キャッシュフロー上は収支がプラスであっても、帳簿上は減価償却費を引いた結果として「不動産所得が赤字」になるケースがあります。この帳簿上の赤字を給与所得と損益通算することで、節税効果を生み出せます。
例として、仙台市内で購入した木造アパート(建物部分3,000万円、耐用年数22年)を所有する場合、定額法では毎年約136万円(3,000万円÷22年)を減価償却費として計上できます。家賃収入が年間180万円あっても、減価償却費136万円に加えて修繕費・管理費・固定資産税などを計上すると、不動産所得がマイナスになるケースがあります。
損益通算が使えないケースと注意点
すべての不動産所得の赤字が損益通算できるわけではありません。重要な例外として以下を押さえておく必要があります。
土地購入に係る借入金利息は通算不可:土地を借入で購入した場合、その借入金利息のうち「土地取得分に相当する利息」は損益通算に使えない制限があります。建物分の借入利息は経費になりますが、土地分はなりません。確定申告の際に誤って計上すると税務調査のリスクが生じるため注意が必要です。
別荘・リゾート等の不動産は通算不可:一定の別荘・リゾート用不動産の損失は、居住用不動産と同様の扱いを受けず、通算の対象外となります。
取得費や売却時の損失は別途扱い:不動産を売却した際の譲渡損失は、原則として不動産所得との通算はできず、「譲渡損失の繰越控除」という別の制度を使うことになります。
繰越損失制度の活用:不動産所得の赤字が大きく、その年の給与所得で吸収しきれなかった場合、確定申告によって翌年以降3年間繰り越すことができます(青色申告が前提)。翌年以降の黒字と相殺することで節税効果を持続させることが可能です。
青色申告との組み合わせが節税最大化のカギ
損益通算の効果を最大限に活かすには、「青色申告」の適用が前提条件になります。白色申告では損失の繰越ができないためです。青色申告の主なメリットは以下の通りです。
- 純損失の3年間繰越控除が可能
- 青色申告特別控除(最大65万円)の適用
- 家族への給与(専従者給与)を経費計上できる
- 修繕費と資本的支出の判断基準が明確化される
青色申告の申請は、開業後2ヶ月以内または当該年の3月15日までに税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。賃貸経営を始めた初年度から忘れずに申請しておくことが重要です。
計算例で理解する損益通算の節税効果
給与所得600万円(税率20%の所得税ブラケット仮定)の会社員オーナーが、不動産所得で100万円の赤字を出した場合の節税効果を試算します。
損益通算前の課税所得:600万円
損益通算後の課税所得:500万円
所得税の差額(概算):100万円×20%=20万円
住民税の差額(概算):100万円×10%=10万円
合計で年間約30万円の節税効果が生まれます。実際には各種控除が加わるためもう少し複雑になりますが、不動産所得の赤字が大きいほど節税額も大きくなる仕組みを理解しておくことが重要です。
なお、この試算は概算であり、実際の税負担は所得構成・控除内容・地方税率によって異なります。具体的な節税額の計算は、税理士に依頼するか税務署の無料相談窓口を活用することをお勧めします。仙台市内には不動産所得に精通した税理士も複数おり、確定申告シーズン前(2〜3月)に相談予約を入れておくと安心です。
著者
森 信幸
代表取締役 / エムアセッツ株式会社
宅地建物取引士(宮城県 第018212号)
仙台市青葉区を拠点に、シャーメゾンを中心とした高品質賃貸物件を所有・運営。全棟ペット可の方針で、入居者とペットが快適に暮らせる住環境づくりに取り組んでいます。
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